ロシア語の単語は、アクセントのある音節を強く長めに発音します。ここでは、単語をどのように音節に分ければよいのかについて説明します。
ロシア語の音節には必ず母音をひとつ含むこと、聞こえ度増大の原則にしたがうことの2つを考えると、ロシア語の単語を音節に分けることができます。
また、音節の境界とハイフネーション(分綴)の違いについても、簡単に説明します。
ロシア語の音節の分け方は英語とは違う
音節とは何かを、一言で言い表すことは難しいのですが、ここでは「ひとつのまとまりだと感じられる音声の連続」と考えてください。
どのような音声の連続がひとまとまりであると感じられるかは、言語によって異なります。同じ音声の連続について、ロシア語話者が感じる音節の境界と、英語話者が感じる音節の境界は異なります。
ロシア語の単語を音節に分ける原則
次の2つの原則を満たすようにすると、ロシア語の単語を音節に分けることができます。
音節は母音をひとつ含む
ロシア語の音節は、必ず母音をひとつだけ含みます。ロシア語の母音は /a/, /e/, /i/, /o/, /u/ の5つです。
ロシア語の母音については、次の記事で説明していますので参考にしてください。
音節は、開音節(かいおんせつ)と閉音節(へいおんせつ)に分類できます。母音で終わる音節が開音節、子音で終わる音節が閉音節です。
母音をⓋ、子音をⒸとすると、開音節と閉音節は次のように表されます。
ここで、子音Ⓒは1つだけの場合もあれば、2つ以上の場合もありますが、多くても4つまでです。また、(Ⓒ)は、子音Ⓒがある場合とない場合があることを表します。
音節内の子音は聞こえ度増大の原則にしたがう
母音が1つだけ含まれる単語は、1つの音節からなる単語で、単音節の単語と呼ばれます。
母音が2つ以上含まれる単語は、2つ以上の音節で構成されます。この場合に、音節の境界がどこにあるのかを考えます。
1つの音節に1つの母音が含まれるので、音節の境界は2つの母音の間のどこかにあります。母音が連続している、つまり、2つの母音の間に子音がなければ、当然、その母音の間が音節の境界(ここでは|で表します)となります。
…Ⓥ|Ⓥ…
それ以外の場合は、母音の間に子音が1つあるか、2つ以上の子音が連続しています。
…ⓋⒸⓋ…、…ⓋⒸⒸⓋ…、…ⓋⒸⒸⒸⓋ…、…ⓋⒸⒸⒸⒸⓋ…
この連続したⒸのどこかに音節の境界があります。音節の境界を決めるためには、基本的には「聞こえ度増大の原則」に従います。
聞こえ度(きこえど)は、聴覚的な音声の聞こえやすさの度合いのことで、専門的にはソノリティ(sonority)と呼ばれます。聞こえ度は、音声がどれだけ子音っぽいか、母音っぽいかの度合いと言い換えることもできます。
ここでは、ロシア語の子音音素と母音音素の聞こえ度を次のように考えます。
聞こえ度 | 音素 | |
---|---|---|
4 | Ⓥ | 母音(/a/, /e/, /i/, /o/, /u/) |
3 | ⓙ | 半母音(/j/) |
2 | Ⓢ | 共鳴音(/m/, /n/, /l/, /r/ とその軟子音) |
1 | Ⓣ | 噪音(破裂音、摩擦音、破擦音) |
聞こえ度の数字が大きいほど聞こえ度が大きく、音の響きが母音に近いことを表します。つまり、子音Ⓒを聞こえ度で噪音Ⓣ、共鳴音Ⓢ、半母音ⓙに分類すると、噪音Ⓣが最も聞こえ度が小さく、接近音ⓙが最も聞こえ度が大きいのです。
聞こえ度増大の原則は、次の原則です。
この原則は、逆の見方をすると、「連続した子音の聞こえ度が減少するならば、そこに音節の境界がある」と言い換えられます。また、「聞こえ度の最も小さな子音の前に、音節の境界がある」ともいえます。
ですから、子音の聞こえ度が、3-1、3-2、2-1 の順に並べば、この間に音節の境界があることになります。いくつか例を挙げます。母音(聞こえ度4)の間にある子音の聞こえ度に着目してください。
ただし、共鳴音(聞こえ度2)が2つ並ぶとき、つまり聞こえ度が 2-2 と並ぶときは、この間に音節の境界があると考えてもよいことになっています。当サイトでは、この条件を満たすときは、2つの共鳴音の間に音節の境界があるとしています。
音節の境界とハイフネーションの違い
例に挙げた単語の中では、Москва のハイフネーションは Моск-ва で、音節の区切り /mo.skva/ とは異なります。また、апрель のハイフネーションは ап-рель で、音節の区切り /a.prʲelʲ/ とは異なります。
ハイフネーションは文字の綴りの上での区切りなので、音節の区切りに加えて、考えなければならない条件が多くあるようです。例えば、少なくとも次のようなことを考える必要がありそうです。
まとめ
ロシア語の単語は、アクセントのある音節を強く長めに発音します。そこで、ロシア語の単語を音節に分ける方法を説明しました。
次の2つの考え方が、ロシア語の音節の分け方の基本です。
しかし、ロシア語を学習するときに、どこで音節が分かれるかを意識する必要はあまりありません。単語にいくつの母音があって、どの母音にアクセントがおかれるかを意識すればよいからです。
ですから、音節の分け方を説明した教科書はほとんどありません。辞書にも音節の境界は載っていませんので、豆知識として説明しました。
なお、次の文献を参考にしています。
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