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タタール語チャレンジ(5日目)【ニューエクスプレスプラス】

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白水社から『ニューエクスプレスプラス タタール語』が2022年12月に発売されて1年が経ちました。

当サイト管理人は、発売直後に購入したものの、ざっと眺めた程度で、ずっと読めずにいました。

2024年1月には同じテュルク諸語の『ニューエクスプレスプラス ウズベク語』が発売されるので、この機会にタタール語を一気に学習することにしました。

タタール語チャレンジの5日目は、第7課と第8課です。タタール語の動詞の命令形や完了形を学習します。

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タタール語チャレンジの進め方

『ニューエクスプレスプラス タタール語』は、白水社から出版された櫻間瑞希さんと菱山湧人さんによるタタール語の入門書です。全20課で構成され、その他に「文字と発音」の章、2課ごとに練習問題があります。

全20課を1日に2課ずつ学習を進めて、その様子を記事にしています。

タタール語文法の概略を説明した後、「日本語文からタタール語の文を作る」練習問題を通して、文法の確認をしていきます。

この記事を通してタタール語に興味を持った方は、ぜひ『ニューエクスプレスプラス タタール語』にチャレンジしてみてください。

櫻間瑞希、菱山湧人(著)
¥3,564 (2024/12/23 22:52時点 | Amazon調べ)

白水社のサイトには正誤表が掲載されていますので、あわせて利用してください。

注意

この記事の内容に誤りがあっても、本書の著者さまや出版社さまには無関係です。誤りは当サイト管理人によるものです。

第7課

動詞の命令形

動詞の命令形は、次のような意味を表します。

  • 2人称に対する命令「~しろ」、「~しなさい」、「~してください」

命令形には、син に対する命令形と、сез に対する命令形があります。

син に対する命令形は「~しろ」、「~しなさい」の意味を表します。これを「命令形単数」と呼んだりします。

動詞の語幹がそのまま命令形になります。語幹が2音節以上の場合は、最初の音節にアクセントが置かれることがあります。

сез に対する命令形は、君たちに対する「~しろ」(親称)、あなた・あなた方に対する「~してください」(敬称)の意味を表します。これを「命令形複数」と呼んだりします。

命令形複数は、語幹に次のような命令形の接尾辞を付けて作ります。

命令形複数の接尾辞
後舌母音前舌母音
母音で終わる語幹-гыз-гез
子音で終わる語幹-ыгыз-егез

アクセントは後ろから2番目の音節に来ますが、最初の音節に置かれることもあります。

命令形の否定

命令形単数の否定は、否定語幹がそのまま使われます。

命令形複数の否定は、否定語幹に命令形複数の接尾辞を附けます。否定語幹は母音で終わるので、-гыз / -гез を付けることになります。

名詞の起点格(奪格)

起点格(奪格)は、「~から」、「~より」のように、主に移動の起点を表すほかに、材料や比較の対象を表したり、全体から一部を取り出す意味を表したりします。

名詞を起点格にするには、名詞に次のような接尾辞を付けます。

起点格の接尾辞
後舌母音前舌母音
母音・有声子音(鼻音以外)で終わる語幹-дан-дән
無声子音で終わる語幹-тан-тән
鼻音(м, н, ң)で終わる語幹-нан-нән

3人称の所有接尾辞の後に起点格の接尾辞を付けるときは、間に -н- を入れて、起点格の接尾辞としては -нан / -нән を付けます。

人称代名詞にも同じように起点格の接尾辞を付けますが、指示詞は次のように特別な形になります。

主格方向格
бумоннан
шулшуннан
уланнан
шушышушыннан
тегетегеннән

形容詞の比較級・最上級

比較級

タタール語の形容詞は、「より~な」のような比較の意味を表すときは、比較級の接尾辞 -рак / -рәк を付けます。

後舌母音の形容詞には -рак を、前舌母音の形容詞には -рәк を付けます。また、形容詞が к, п で終わる場合は、それを г, б に変えます。

「~より」という比較の対象は、名詞の起点格を使って表します。

最上級

「最も~な」という最上級を表すには、接尾辞を付けるのではなく、形容詞の前に иң「最も」を付けます。

第8課

動詞の完了形

動詞の完了形は、次のような意味を表します。

  • 動作が行なわれた結果の状態「(すでに)~している」(完了)
  • 他人から聞いたりして間接的に知ったこと「~したそうだ」(伝聞過去)
  • 動作が行なわれた時点よりも後でそのことに気付いたこと「~したようだ」(想起過去)

いろいろな意味を表していて不思議な感じがしますが、基本的には、その動作や行為が話し手にとって間接的な出来事であることを表します。

「完了」の意味合いでは、過去に行なわれた動作・行為そのものではなく、その結果に着目しています。

「伝聞過去」の意味合いでは、過去に行なわれた動作・行為を、他人から得た知識として間接的に述べています。

また、「想起過去」の意味合いでは、過去に行なわれた動作・行為が行なわれた時点では、話し手はそのことを知らず、後から気付いて思い起こしています。

これらのように「間接的」に動作を述べる点が、第6課で学習した過去形とは大きく異なります。過去形では、過去の動作そのものを「直接的」に述べます。

完了形は、次のような完了形の接尾辞を付けて作ります。

完了形の接尾辞
後舌母音前舌母音
母音・有声子音で終わる語幹-ган-гән
無声子音で終わる語幹-кан-кән

完了形の否定

「(まだ)~していない」、「~しなかったそうだ」、「~しなかったようだ」という完了形の否定は、否定語幹に完了形の接尾辞を付けます。

このとき、否定語幹は母音で終わるので、-ган / -гән を付けることになります。

動詞の完了形+人称の付属語

主語が1・2人称のときは、動詞の完了形に人称の付属語を付けます。

過去形では人称の「接尾辞」を付けましたが、完了形では現在形と同じように人称の「付属語」を付けます。違いによく注意してください。

人称の付属語
後舌母音前舌母音
単数 1人称 мин -мын-мен
2人称 син -сың-сең
複数 1人称 без -быз-без
2人称 сез -сыз-сез

現在形では、主語が1人称単数のときに、 という短い形の接尾辞を付けましたが、完了形ではそのようなことはありません。

名詞の対象格(目的格・対格)

対象格(目的格・対格)は、「~を」のように、主に動作の及ぶ対象を表します。

名詞を対象格にするには、名詞に -ны / -не という接尾辞を付けます。

ただし、3人称の所有接尾辞の後には を付けます。

人称代名詞や指示詞の対象格も、同じように接尾辞を付けますが、次の単語は特別な形になります。

人称代名詞指示詞
主格対象格主格対象格
минмине бумоны
синсине шулшуны
уланы

文の中の目的語には、必ず対象格の接尾辞が付くわけではありません。

目的語が特定の人や物を表すときは、対象格の接尾辞が付きます。

目的語が不特定の人や物を表すときは、その目的語が動詞の直前に置かれたときは対象格の接尾辞が付きません。動詞の直前以外の場所に置かれたときは、目的語であることがはっきり分かるように対象格の接尾辞が付くようです。

限定の付属語「~だけ」

限定の付属語というのは、「~だけ」という限定の意味を表す単語です。

限定の付属語
後舌母音前舌母音
母音・有声子音で終わる語幹гынагенә
無声子音で終わる語幹кынакенә

限定の付属語は、前の単語から離して書きます。

名詞や代名詞に限定の付属語が付くと、「~だけ」という限定の意味を表しますが、形容詞や副詞に付くこともあって、その場合は形容詞や副詞の性質を弱めたり、強めたりするようです。

疑問

本書のこの課を学習しただけだと、形容詞や副詞に限定の付属語が付いた場合の意味がよく分かりませんでした。形容詞の意味を弱めるのか?強めるのか? 形容詞によって意味合いが変わるのか?

もっと学習を進めて、多くの例文にあたると分かってくるかもしれません。

練習問題

日本語の文からタタール語の文を作る練習問題を通じて、文法をおさらいしましょう。

(1) 私は馬を木から作りました。

単語
  • мин
  • ат
  • агач
  • яса- 作る

「馬を」、「木から」、「作った」の語順でタタール語の文を作ることにします。

この文での「馬」は、特定の物ではないと考えられますが、「作った」の直前にはありませんから、対象格の接尾辞を付けて атны とします。

「木から」の「~から」は、材料を表す用法ですね。起点格の接尾辞を付けて агачтан となります。

「作りました」は、話し手が直接的に実行した動作だと考えられます。過去形の接尾辞を付けて ясады となって、さらに主語が1人称単数ですから人称の接尾辞 を付けて ясадым です。

Мин атны агачтан ясадым.

(2) 夏は今年、より短くなりました。

単語
  • җәй
  • быел 今年
  • кыска 短い
  • бул- ある、である、なる

「より短い」という比較級がポイントです。

кыска「短い」は後舌母音の単語ですから -рак を付けて кыскарак となります。

「なりました」は、話し手が直接的に「短くなった」と感じたのでしょう。過去形の接尾辞 -ды を付けて булды となります。主語は җәй「夏」という3人称単数ですから、人称の接尾辞は付けません。

Җәй быел кыскарак булды.

(3) いちばんおいしい料理はボルシチです。

単語
  • иң 最も
  • тәмле おいしい
  • ризык 料理
  • борщ ボルシチ

「いちばんおいしい料理」は、最上級の表現です。形容詞の前に иң を置くだけでよいので、иң тәмле ризык となります。

述語は名詞の борщ ですね。主語の「いちばんおいしい料理」と「ボルシチ」を並べれば文は完成しますが、名詞句と名詞が並びますから、間にダッシュを入れて書くことによって、主語と述語が分かりやすくなります。

Иң тәмле ризык — борщ.

(4) たくさん寝るな、そしてたくさん食べるな。

単語
  • күп 多い
  • йокла- 寝る
  • һәм ~と~(並列)
  • аша- 食べる

命令形の否定が2つ並んだ文です。

ここでの命令形の日本語は「寝るな」、「食べるな」ですから、親称の син に対する命令(命令形単数)として考えましょう。

動詞の否定語幹がそのまま命令形単数の否定になるのでした。否定語幹はそれぞれ йоклама-, ашама です。

「たくさん」は күп「多い」という形容詞をそのまま副詞的に「多く」とすることによって表せます。

2つの命令家文の間には、並列の意味を表す һәм を置けばよいですね。

Күп йоклама һәм күп ашама.

(5) リリヤはマラットに手紙を送ったそうです。

単語
  • Лилия リリヤ〔女性名〕
  • Марат マラット〔男性名〕
  • хат 手紙
  • җибәр- 送る

「マラットに」は方向格の接尾辞を付けて Маратка と言えます。

「手紙を」はこの文の中で目的語となりますが、特定の手紙とは考えにくいので、対象格の接尾辞は付けません。 хат そのままで目的語になります。

「送ったそうです」は、話し手にとって間接的に知った過去の動作ですね。このため完了形を使って表します。

җибәр-「送る」に完了形の接尾辞 -гән を付けます。主語は Лилия で3人称単数ですから、人称の付属語は付けません。

Лилия Маратка хат җибәргән.

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