タタール語チャレンジ(3日目)【ニューエクスプレスプラス】

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白水社から『ニューエクスプレスプラス タタール語』が2022年12月に発売されて1年が経ちました。

当サイト管理人は、発売直後に購入したものの、ざっと眺めた程度で、ずっと読めずにいました。

2024年1月には同じテュルク諸語の『ニューエクスプレスプラス ウズベク語』が発売されるので、この機会にタタール語を一気に学習することにしました。

タタール語チャレンジの3日目は、第3課と第4課です。タタール語の所有に関係する表現を学習します。

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タタール語チャレンジの進め方

『ニューエクスプレスプラス タタール語』は、白水社から出版された櫻間瑞希さんと菱山湧人さんによるタタール語の入門書です。全20課で構成され、その他に「文字と発音」の章、2課ごとに練習問題があります。

全20課を1日に2課ずつ学習を進めて、その様子を記事にしています。

タタール語文法の概略を説明した後、「日本語文からタタール語の文を作る」練習問題を通して、文法の確認をしていきます。

この記事を通してタタール語に興味を持った方は、ぜひ『ニューエクスプレスプラス タタール語』にチャレンジしてみてください。

櫻間瑞希、菱山湧人(著)
¥3,564 (2024/07/25 08:35時点 | Amazon調べ)

白水社のサイトには正誤表が掲載されていますので、あわせて利用してください。

注意

この記事の内容に誤りがあっても、本書の著者さまや出版社さまには無関係です。誤りは当サイト管理人によるものです。

第3課

名詞の所有格(属格)

名詞や代名詞は、文の中の役割によって、いろいろな形の接尾辞が付きます。この役割のことを格といいます。

所有格は、「~の」のように、主に所有者を表します。

名詞を所有格にするには、名詞に -ның / -нең を付けます。

所有格の接尾辞
後舌母音前舌母音
-ның-нең

人称代名詞や指示詞の所有格も、同じように接尾辞を付けますが、次の単語は特別な形になります。

人称代名詞指示詞
主格所有格主格所有格
минминем бумоның
синсинең шулшуның
уланың

所有接尾辞

「AのB」を表すには、「Aの」を名詞や代名詞の所有格で表すだけでなく、Bの後ろには所有接尾辞を付ける必要があります。

所有接尾辞を付けることによって、何か・誰かに所有されているという意味が付け加わって、Bを限定していることになります。

「AのB」のAが1・2人称の場合は、Bに次の所有接尾辞を付けます。

1・2人称の所有接尾辞
後舌母音前舌母音
単数 1人称 минем -(ы)м -(е)м
2人称 синең -(ы)ң -(е)ң
複数 1人称 безнең -(ы)быз -(е)без
2人称 сезнең -(ы)гыз -(е)гез

Aが子音で終わる名詞の場合は ( ) の中の母音を付け加えます。母音で終わる名詞の場合は付け加えません。つまり、子音が連続しないようにするわけです。

Aが3人称の場合は、Bに次の所有接尾辞を付けます。

3人称の所有接尾辞
後舌母音前舌母音
母音で終わる名詞 -сы -се
子音で終わる名詞

このように、「AのB」という所有関係は、「Aの所有格 + B + 所有接尾辞」のように表すのが基本です。

しかし、Aが1・2人称の場合は、所有接尾辞だけで誰の所有であるかが分かるので、Aを省略して「B + 所有接尾辞」だけで表すことがあります。

また、反対に、人称代名詞がある場合は所有接尾辞を付けずに「Aの所有格 + B」だけで表すこともあります。

接尾辞 -ныкы / -неке

「Aの~」を表す場合には、Aに所有格の接尾辞を付けますが、「Aのもの」のように名詞的に表す場合には、Aの後に -ныкы / -неке という接尾辞を付けます。

ただし、次の人称代名詞や指示詞は、特別な形になります。

人称代名詞指示詞
主格~のもの主格~のもの
минминеке бумоныкы
синсинеке шулшуныкы
уланыкы

複合名詞

「電話」と「番号」という2つの名詞を組み合わせた「電話番号」のような複合名詞の作り方です。

2つの名詞AとBをそのまま並べて、Bには3人称の所有接尾辞を付けて表します。

複合名詞を複数形にする場合は、複数の接尾辞を付けた後に、所有接尾辞を付けます。

  • A + B + 複数の接尾辞 + 3人称の所有接尾辞

複合名詞が、1・2人称の人物の所有物である場合には、1・2人称の所有接尾辞を付けなければなりませんが、その時に、複合飯を作るときに付けた3人称の所有接尾辞を取り除いてから1・2人称の所有接尾辞を付けます。

文章で書くと複雑に感じますが、実際に練習問題を解きながら確認しましょう。

第4課

名詞の位置格(位格)

位置格は、「~で」、「~に」のように、主に場所や時間を表します。

名詞を位置格にするには、名詞に次のような接尾辞を付けます。

位置格の接尾辞
後舌母音前舌母音
母音・有声子音で終わる名詞 -да -дә
無声子音で終わる名詞 -та -тә

3人称の所有接尾辞の後に位置格の接尾辞を付ける場合には、所有接尾辞と位置格の接尾辞の間に -н- を入れます。このため、有声子音で終わることになるので、-да / -дә が付きます。

指示詞 бу, шул, ул の位置格は特別な形になり、шушы, теге の後には -н- を入れます。

主格位置格
бумонда
шулшунда
уланда
шушышушында
тегетегендә

位置格の名詞を述語として使うと、人や物のいる・ある場所を表します。これについては、次の存在文を項を参照してください。

存在文

「~に…がある・いる(ない・いない)」のように、どこかに何かが存在している(いない)状況を表すには、名詞の位置格と、бар「ある・いる」、юк「ない・いない」を組み合わせて使います。

  • Aの位置格 + B + бар / юк.「AにBがある・いる(ない・いない)」

すでに話題になっている物や人がどこにいるかを説明するには、その場所を位置格にして述語として使います。このとき、бар / юк は使いません。否定する場合(ない・いない)は、түгел を述語である位置格の名詞の後に置きます。

  • A + Bの位置格.「AはBにある・いる」
  • A + Bの位置格 + түгел.「AはBにない・いない」

所有文

「~は…をもっている(もっていない)」、「~には…がいる(いない)」のように所有関係がある(ない)ことを表すには、「所有者を表す名詞の所有格、所有される物を表す名詞、所有接尾辞、бар / юк」で表します。

  • Aの所有格 + B + 所有接尾辞 + бар / юк.「AはBをもっている(もっていない)」

これは、日本語話者には以外と難しい構文だと思います。

「Aの所有格 + B + 所有接尾辞」の部分は、「AのB」という所有関係を表す表現です。

ですから、「AがBを所有している」、「BはAの所有物である」という状況が「ある(ない)」と表現することによって、日本語で表せば「AはBをもっている(もっていない)」と表現していることになります。

練習問題

日本語の文からタタール語の文を作る練習問題を通じて、文法をおさらいしましょう。

(1) 彼女の髪は長いです。

単語
  • аның 彼の、彼女の(ул の所有格)
  • чәч
  • озын 長い

「彼女の髪」は、ул「彼女」の所有格 аныңчәч「髪」を続け、さらに、所有者が「彼女」ですから3人称の所有接尾辞を付けて表します。

このような表現の場合、タタール語では「髪」を複数形にしなければならないようです。このため、чәч「髪」に、所有接尾辞と複数の接尾辞の両方を付けなければなりません。

本書の「文法のまとめと補足(p.160)」に、「名詞類(名詞・代名詞・形容詞など)に付く主な接尾辞は、複数・所有・格の接尾辞で、この順番で付きます。」とあります。

したがって「彼女の髪」は、аның чәчләрә となります。чәч「髪」、-ләр「複数の接尾辞」、「3人称の所有接尾辞」です。

疑問

名詞類に付く接尾辞の順序が、複数・所有・格の順番であることを探し当てるのに、かなり時間がかかってしまいました。

第3課のあたりに記述があれば良かったと思います(複合名詞の場合の、複数の接尾辞と所有接尾辞の順序については書かれています)。

Аның чәчләре озын.

(2) 君の学校は遠いかい?

単語
  • синең 君の
  • мәктәп 学校
  • ерак 遠い

これも「君の学校」という所有の表現が重要ですね。

син「君」の所有格は синең という特別な形でした。мәктәп「学校」には、2人称単数 син が所有者であることに対応した所有接尾辞 -(ы)ң / -(е)ң を付ける必要があります。

мәктәп が前舌母音の単語で子音で終わっているので、-ең を付けますが、мәктәпең ではいけません。「文字と発音」で説明したように、無声子音 к, п で終わる単語に母音で始まる接尾辞が付くと、г, б になるのでした。

したがって「君の学校」は、синең мәктәбең となります。

また、ерак「遠い」に疑問の付属語が付くと、еракмы となります。

Синең мәктәбең еракмы?

(3) 私は今、日本にいません。

単語
  • мин
  • хәзер
  • Япония 日本
  • түгел ~ではない

「私」がどこかに存在するか(しないか)を説明する存在文の表現です。

すでに話題になっている物や人の存在場所を表現するには、位置格の名詞を述語に使うのでした。мин「私」という人物は、話し手本人であり、特定された人物ですから、この表現を使います。

存在場所の Япония「日本」に位置格の接尾辞を付けなければなりません。Япония はロシア語からの借用語です。この場合、語末が -ь, -ия, -ие で終わる単語には、基本的に前舌母音の接尾辞を付けます。このため Япоинядә となります。

Мин хәзер Япониядә түгел.

(4) 君は今日、家にいますか?

単語
  • син
  • бүген 今日
  • өй

(3)と同じように、主語の「君」がどこかに存在するか(しないか)を説明する文で、疑問文となっています。

述語として、存在場所である өй「家」を位置格にして、疑問の付属語を付ければよいですね。

өй は前舌母音の単語ですから、接尾辞を前舌母音の形でそろえるだけです。

Син бүген өйдәме?

(5) 私たちの村にはインターネットがありません。

単語
  • без 私たち
  • авыл
  • интернет インターネット
  • юк ない・いない

(3)や(4)とは違って、「私たちの村」という場所に、「インターネット」という物が存在する(しない)ことを表現する存在文です。

場所の名詞を位置格にして、存在する(しない)物のあとに бар / юк を置いて表します。

「私たちの」は、без「私たち」に所有格の接尾辞を付けるだけですから безнең です。

авыл「村」には、1人称複数の所有接尾辞を付けて авылыбыз としてもよいですが、人称代名詞の「私たちの」がありますから、そのまま авыл でも大丈夫です。模範解答はこのようになっています。

位置格の接尾辞を付けると авылда となります。

Безнең авылда интернет юк.

(6) あなたは猫を飼っていますか?

単語
  • сез あなた
  • песи
  • бар ある・いる

この文は「あなたは猫をもっていますか?」と解釈してタタール語に訳しましょう。すると、所有関係を表す文ですから、形の上では「あなたの猫、ありますか?」という語順になります。

「あなたの」は、сез「あなた」の所有格の接尾辞を付けて сезнең です。「猫」は、песи に、所有者が敬称の「あなた」ですから2人称複数の所有接尾辞を付けて表します。

песи は前舌母音の単語で、и [ij] で終わっていますから子音で終わる単語です。ですから所有接尾辞は -егез の形になります。

したがって「あなたの猫」は、сезнең песиегез となります。

「ありますか?」は бармы? ですね。

Сезнең песиегез бармы?

(7) このペンはあなたのですか?

単語
  • бу これ、この
  • ручка ペン
  • сезнеке あなたのもの

「~のもの」を表す -ныкы / -неке を使った表現です。

「このペン」は、そのまま бу ручка でよいですね。ручка はロシア語からの借用語です。このため、 ч の文字を [ɕ] ではなく [t͡ɕ] と発音します。

「あなたの」は「あなたのもの」の意味ですから、сез「あなた」に -неке を付けて сезнеке となります。

これに疑問の付属語を付けてできあがりです。

Бу ручка сезнекеме?

(8) トゥカイ広場はどこですか?

単語
  • Тукай トゥカイ〔人物名〕
  • мәйдан 広場
  • кайда どこで

「トゥカイ広場」という既に話題になっている物のある場所を尋ねる文です。場所を表す単語を位置格にして述語として使えばよいのですね。

「トゥカイ広場」は複合名詞ですから、мәйдан「広場」には3人称の所有接尾辞を付けて表します。мәйдан は子音で終わる単語なので -ы / -е を付けます。

しかし мәйдан は、前舌母音と後舌母音の両方が使われた単語ですね。どうやらペルシア語起源の単語のようです。最後の母音が а で後舌母音ですから、 を付けておきましょう。

第2課では疑問詞として、кайда「どこで」と кая「どこへ」を学習しました。それぞれ、「どこ」の位置格と方向格(第6課で学習します)であると考えればよいです。

ここでは位置格の形が必要ですから、кайда を使います。第2課には「どこで」としか書かれていませんが、「どこで、どこに」の意味であると考えればよいですね。

疑問詞のある疑問文ですから、疑問の付属語を付けてはいけません。

Тукай мәйданы кайда?

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