タタール語チャレンジ(7日目)【ニューエクスプレスプラス】

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白水社から『ニューエクスプレスプラス タタール語』が2022年12月に発売されて1年が経ちました。

当サイト管理人は、発売直後に購入したものの、ざっと眺めた程度で、ずっと読めずにいました。

2024年1月には同じテュルク諸語の『ニューエクスプレスプラス ウズベク語』が発売されるので、この機会にタタール語を一気に学習することにしました。

タタール語チャレンジの7日目は、第11課と第12課です。タタール語の動詞の提案形や願望形、受動や使役の表現を学習します。

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タタール語チャレンジの進め方

『ニューエクスプレスプラス タタール語』は、白水社から出版された櫻間瑞希さんと菱山湧人さんによるタタール語の入門書です。全20課で構成され、その他に「文字と発音」の章、2課ごとに練習問題があります。

全20課を1日に2課ずつ学習を進めて、その様子を記事にしています。

タタール語文法の概略を説明した後、「日本語文からタタール語の文を作る」練習問題を通して、文法の確認をしていきます。

この記事を通してタタール語に興味を持った方は、ぜひ『ニューエクスプレスプラス タタール語』にチャレンジしてみてください。

櫻間瑞希、菱山湧人(著)
¥3,564 (2024/07/25 08:35時点 | Amazon調べ)

白水社のサイトには正誤表が掲載されていますので、あわせて利用してください。

注意

この記事の内容に誤りがあっても、本書の著者さまや出版社さまには無関係です。誤りは当サイト管理人によるものです。

第11課

動詞の提案形

動詞の提案形は、次のような意味を表します。

  • 話し手の自分の意志を表す「~しよう」
  • 話し手の聞き手に対する提案や勧誘を表す「~しよう」

提案形には、мин による提案形と、без による提案形があります。

мин による提案形は、「私は~しよう」の意味を表します。これを「提案形単数」と呼んだりします。

без による提案形は、「私たちは~しよう」の意味を表します。これを「提案形複数」と呼んだりします。

これらの提案形は、語幹に次のような提案形の接尾辞を付けて作ります。

提案形の接尾辞
後舌母音前舌母音
мин による提案形-ыйм-им
без による提案形-ыйк-ик

ただし、母音で終わる語幹には、その母音を取り除いてから提案形の接尾辞を付けます。

提案形の否定

提案形の否定は、否定語幹に提案形の接尾辞を付けます。このとき、否定語幹の最後の母音を取り除きます。

したがって、提案形単数の否定は -мыйм / -мим、提案形複数の否定は -мыйк / -мик が、動詞の語幹に付くことになります。

動詞の願望形

動詞の願望形は、次のような意味を表します。

  • 話し手による3人称に対する願望「~するように」
  • 話し手による3人称に対する間接的な命令「~させよ」

願望形は、語幹に -сын / сен という願望形の接尾辞を付けて作ります。

また、複数の人に対する願望では、動詞の願望形にさらに複数を表す -нар / -нәр が付くことがあります。

願望形は話し手による願望を表しますが、文の主語は「私」ではありません。主語は、その動作を行なう3人称の人ですから、注意してください。

願望形の否定

「~しないように」のような願望形の否定は、否定語幹に -сын / сен を付けて作ります。

願望形+иде

願望形の後ろに иде を置くことで、「~してほしい」という3人称に対す控えめな希望や要求を表すことができます。

第12課

受動や使役などの表現は、文法用語では「態(たい)、voice」と呼ばれます。態は、文で中心となる動作と、その動作を行なう人や物、動作を受ける人や物との関係を表す文法用語です。

タタール語では、動詞の語幹に、さまざまな態を表す接尾辞を付けて表します。これらの接尾辞の付いた形が新しく動詞語幹となって、さらに時制や人称の接尾辞などが付きます。

受動の動詞

「~される」という受動の動詞語幹は、受動の接尾辞を付けて作ります。

受動の接尾辞
後舌母音前舌母音
母音(ла / лә 以外)で終わる語幹
子音(л 以外)で終わる語幹-ыл-ел
ла / лә で終わる語幹
л で終わる語幹-ын-ен

基本的には -ыл / -әл で終わるのですが、語幹末が に関係していると接尾辞が -ын / -ән になります。

動詞によっては、受動の接尾辞が付いて、「閉める」から「閉まる」のように、他動詞から自動詞の意味に変わるものもあります。

使役の動詞

「~させる」という使役の動詞語幹は、使役の接尾辞を付けて作ります。

使役の接尾辞にはいくつかの種類があって、動詞によってどの接尾辞が付くか決まっています。

使役の接尾辞
後舌母音前舌母音
母音や р で終わる語幹
その他の語幹-дыр-дер
-тыр-тер
-ыр-ер
-ар-әр

それぞれの動詞がどのような使役の形になるかは、辞書を調べる必要があります。辞書には、接尾辞の付いた形も基本的に載っているそうです。

動詞によっては、使役の接尾辞が付いて、「出る」から「出す」のように、自動詞から他動詞の意味に変わるものもあります。

相互の動詞

「(互いに)~する」、「(一緒に)~する」、「~しあう」という相互の動詞語幹は、相互の接尾辞を付けて作ります。

相互の接尾辞
後舌母音前舌母音
母音で終わる語幹
子音で終わる語幹-ыш-еш

相互の接尾辞は が特徴ですね。

再帰の動詞

「自分を~する」、「自ずと~する」という再帰の動詞語幹は、再帰の接尾辞を付けて作ります。

再帰の接尾辞
後舌母音前舌母音
母音で終わる語幹
子音で終わる語幹-ын-ен

再帰代名詞

再帰の動詞に関連して、再帰代名詞について学習します。

タタール語には үз という再帰代名詞があります。

名詞の前に置いて、「自分の~」のように形容詞的な意味を表します。

ただし、үз に所有接尾辞が付くと、その所有者自身という名詞的な意味を表します。

再帰代名詞の使い方は、練習問題の(7)と(8)で確認しましょう。

練習問題

日本語の文からタタール語の文を作る練習問題を通じて、文法をおさらいしましょう。

(1) さあ、通りに出ましょう!

単語
  • әйдә(гез) さあ
  • урам 通り
  • чык- 出る

提案形を使う文のようですね。

提案形の文で「さあ」のように促す気持ちを表すには、әйдәәйдәгез を使います。әйдәсин に対して、әйдәгезсез に対して促すときに使います。

ここでの日本語文は「出ましょう」ですから、敬称の сез に対して話していると考えて、әйдәгез を使ってみましょう。

「通りに」の「に」は、「出る」という動作の到達点を表しますから、方向格の接尾辞を付けるのがよいでしょう。урамга となります。

「出ましょう」の提案形は、聞き手を含めた「私たち」が主語と考えられます。提案形複数の接尾辞 -ыйк を付けると чыкыйк となりそうですが、к, п で終わる語幹に、母音で始まる接尾辞が付くと、г, б に子音交替するのでした。このため чыгыйк となります。

疑問

促す気持ちを表す әйдәәйдәгез は、一見すると動詞の命令形に見えます。

әйдә-「呼ぶ、招く」という動詞があるようです。この命令形の単数と複数がそれぞれ әйдә, әйдәгез ですから、この単語がもととなって間投詞のような用法が独立したのかもしれません。

実際はどうなのでしょうか?

Әйдәгез, урамга чыгыйк!

(2) 手を洗おうっと。

単語
  • кул 手、腕
  • ю- 洗う
  • әле (提案を強調する)

「洗おうっと」は、どのような状況を表しているでしょうか。

話し手の意思の表明のような感じでしょうか。このような場合には動詞の提案形を使うのですね。

洗う対象は「話し手自身の手」ですから、кул「手」には1人称の所有接尾辞を付けて、さらに対象格の接尾辞も必要です。

кул + -ым + -ны で、кулымны となります。

ю-「洗う」には提案形単数の接尾辞 -ыйм / -им のどちらかを付けることになります。ю は 後舌母音の й+у [ju] と前舌母音の й+ү [jʉ] の両方の発音を表す文字でした。残念ながら文字の綴り ю- からはどちらの発音なのかは分かりません。

辞書を調べたり、他の接尾辞の付いた形を覚えるしかありませんが、この単語の場合は後舌母音です。ですから -ыйм を付けましょう。

模範解答では、さらに文末に әле が付いていました。意志や提案を強調する単語です。日本語文の「~っと」の部分に対応しているのでしょう。

疑問

本書では、動詞を語幹の形(「洗う」なら ю-)で示す方針です。これは、とてもシンプルに動詞を示すことができる反面、後舌母音の単語なのか前舌母音の単語なのかが分からない場合があります。そのような単語には、単語リストで発音も示してあるとありがたいですね。

タタール語辞書の方針はさまざまで、動名詞の形で示す辞書や不定形の形で示す辞書もあるようです。動名詞で示すと юу となりますし、不定形で示すと юарга となって、後舌母音の単語であることがすぐに分かります。

語幹で示す方法と、動名詞や不定形で示す方法には、それぞれ一長一短がありそうです。

なお、管理人が時々利用しているロシア語版wiktionaryでは不定形で示されています。

юарга — Викисловарь

Кулымны юыйм әле.

(3) あなたの子どもが学校に遅れないようにしてください。

単語
  • бала 子ども
  • мәктәп 学校
  • соңга кал- ~に遅れる(方向格と)

「あなたの子ども」は、балагыз のように2人称複数の所有接尾辞を付けて表すのが最もシンプルです。

сезнең балагызсезнең бала でも構いません。

「~に遅れる」の「~に」は方向格で表すので、「学校に」は мәктәпкә となります。

「遅れないようにしてください」は、3人称に対する願望、あるいは間接的な命令ですから、願望形を使います。

соңга кал-「~に遅れる」に否定の接尾辞 -ма を付けて、願望形の接尾辞 -сын を付ければ出来上がりです。

Балагыз мәктәпкә соңга калмасын.

(4) お父さんは飲まないでほしいな。

単語
  • әти
  • эч- 飲む
  • иде ~してほしい(願望形と)

これも願望を表す文ですね。

ここでは誰のお父さんかは分からないので、そのまま әти を使っておきましょう。

「飲まないようにしてください」と間接的に命令するのではなく、もっと控えめに「飲まないでほしいな」と言っているので、願望形の後ろに иде を付けた形で表します。

эч + -мә + -сениде を付けて、эчмәсен иде となります。

Әти эчмәсен иде.

(5) 集会はいつはじまりますか?

単語
  • җыелыш 集会
  • кайчан いつ
  • башла- はじめる
  • башлан- はじまる

上に示したように、「はじまる」という動詞は башлан- といいます。これは башла-「はじめる」を受動の形で表現して、他動詞が自動詞になった単語です。

「はじまりますか?」は、近い未来に実現する動作ですから現在形で表すことができます。

Җыелыш кайчан башлана?

(6) ハチは花に隠れた。

単語
  • бал корты ハチ
  • чәчәк
  • яшер- 隠す
  • яшерен- 隠れる

「隠れる」は、яшер「隠す」という他動詞から作られますが、受動ではなく再帰の接尾辞を付けて яшерен- と表します。「自分を隠す」ので「隠れる」ということですね。

「花に」は、位置格を使うか方向格を使うか少し悩みましたが、方向格を使うのが正解のようです。どの格を使うべきか判断するには、慣れが必要ですね。

Бал корты чәчәккә яшеренде.

(7) 私は自分自身の意見を言いました。

単語
  • мин
  • үз 自分の~
  • фикер 意見
  • әйт- 言う

再帰代名詞には形容詞的な使い方と名詞的な使い方がありました。

ここでは「自分自身の意見」です。「自分の~」のように形容詞的に使えば良さそうです。

үз фикер で「自分の意見」となりますが、「私の意見」なので1人称単数の所有接尾辞 -ем を付けなければいけません。さらに「意見を」なので対象格の接尾辞 -не も忘れずに付けましょう。

「言いました」は、әйт-「言う」に過去形の接尾辞と1人称単数の人称の接尾辞を付けるだけです。

Мин үз фикеремне әйттем.

(8) 物語を私たち自身で書いています。

単語
  • әкият 物語
  • үз ~自身(所有接尾辞を付けて)
  • яз- 書く

「私たち自身」は、再帰代名詞 үз を名詞的に使って、1人称複数の所有接尾辞を付けて表します。үзебез となります。

文の構造としては、「書く」という動作を行なうのは「私たち」ですから、үзебез を主語と考えます。

「物語を私たち自身が書いています。」と解釈するわけですね。

この語順の場合、「物語」は特定の物とは考えられませんが、動詞の直前には置かれませんから、対象格の接尾辞を付けましょう。

「書いています」は現在形です。яз-「書く」に現在形の接尾辞 -а / -ә のどちらかを付けますが、яй+а [jɑ]й+ә [jæ] のどちらなのか分かりません。辞書で調べると後舌母音の単語であることが分かります。

したがって現在形の接尾辞は が付いて、さらに1人称複数の人称の付属語 -быз が付きます。

Әкиятне үзебез язабыз.

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