音声を発するために必要な3つのプロセス【語学を楽しむための音声学】

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ある言語の発音を理解するためには、実際の発音をたくさん聞くことは大切です。そして音声学の知識があると、とても効率的に語学を学べます。語学を楽しむために必要な音声学の知識のうち、音声を発するために必要な3つのプロセスについて説明します。

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音声学とは

人間が言葉によるコミュニケーションに使う音を音声といいます。言葉による情報伝達に使うという点で、音声は単なる音とは違うものとして扱われます。この音声に関する研究が音声学です。音声学は、次の3つの分野に大きく分かれます。

  • 調音音声学:人間は筋肉などの器官をどのように動かして音声を発するのか
  • 音響音声学:発せられた音声は空気中で物理的にどのような状態なのか
  • 聴覚音声学:人間は空気中を伝わってきた音声をどのように知覚するのか

このうち調音音声学は、話し手の立場から音声を研究する学問なので、語学を学ぶ上で、ある言語のある音をどのようにしたら発音できるのかという疑問にヒントを与えてくれるものです。

音声を発するために必要な3つのプロセス

音声を発するためには、次の3つのプロセスが関係します。

  • 気流の発動 ~ 空気の流れを作り出す
  • 発声 ~ 必要に応じて声を作り出す
  • 調音 ~ いろいろな種類の音声を作り出す

これらのプロセスについて、順に見ていきます。

気流の発動 ~ 空気の流れを作り出す

音声を発するには、口や鼻の中の空間に何らかの空気の流れ、つまり気流を起こす必要があります。一番ふつうに考えられるのは、息を吸ったり吐いたりすることによって気流を起こす方法です。これは、肺の働きによって気流を発動するものです。少し特殊な気流の起こし方として、次のように、喉頭を使う方法や軟口蓋を使う方法があります。

  • 肺気流機構:肺を使う
  • 喉頭気流機構:喉頭を使う
  • 軟口蓋気流機構:舌と軟口蓋を使う

喉頭気流と軟口蓋気流をあわせて、非肺気流と呼んだりします。また、気流の流れる向きには2種類が考えられます。

  • 中から外へ空気が流出する
  • 外から中へ空気が流入する

喉頭気流機構と軟口蓋気流機構によって作られる子音については、次の記事で説明していますので、参考にしてください。

≫ 放出音、入破音、吸着音という肺気流を使わない子音

発声 ~ 必要に応じて声を作り出す

のどには軟骨で囲まれた喉頭(こうとう)があります。その中には筋肉でできた2本の声帯(せいたい)があって、これらの隙間を声門(せいもん)といいます。気流が声門を通るときに、声帯が気流に対して行なう働きを発声といいます。ここでは、発声の状態を、有声無声の2つに大きく区別しておきます。

  • 有声:声帯がある程度近づいて声門がかなり狭まり、通過する気流により声帯が振動し、気流がその影響を受けた状態
  • 無声:声帯どうしが離れて声門が広く開けられていて、空気がすんなりと通り声帯が振動しない状態

なお、「のど」には咽頭と喉頭があります。耳鼻咽喉科にはこの両方が含まれていますね。口を大きく開けたときに口の外から見える部分が咽頭、のど仏のあたりが喉頭です。

調音 ~ いろいろな種類の音声を作り出す

主に肺から流れてきた気流に対して、舌などを動かして気流の通り道の形を変化させて色々な音声を出すことを調音(ちょうおん)といいます。また、喉頭を出てから口、鼻の端までの気流の通り道を声道(せいどう)といいます。声道は、次の調音器官(ちょうおんきかん)から成り立っています。

  • 鼻腔(びこう):鼻の中の空間
  • 口腔(こうこう):舌と口蓋と両頬に囲まれた部分
  • 咽頭(いんとう):舌根と咽頭壁に囲まれた部分で、咽頭腔(いんとうこう)ともいう

調音器官は、さらに細かく分類するのがふつうです。また、声道の奥は、喉頭から気管を通じて肺へとつながっています。

≫ いろいろな音声を作り出す調音器官と音声器官

子音と母音

気流の発動、発声、調音の3つのプロセスを経て、さまざまな音声が発せられます。この音声は、ふつう子音と母音とに分けて考えることができます。

  • 子音:声道内の調音器官どうしが接近したり接触したりすることで、息が妨げられて作られる音
  • 母音:調音器官によって特に邪魔されずに出される音

子音と母音の区別は絶対的なものではありません。気流がわずかに妨げられる音と、まったく妨げられない音とを区別するのは難しい問題です。子音の中で接近音に分類される音声のうち、とくに母音と同じ口の構えで発音される子音は、半母音という用語が付けられています。

参考文献
  • 神山孝夫(2012)『ロシア語音声概説』研究社.
  • 小泉保(2003)『改訂 音声学入門』大学書林.
  • 斎藤純男(2006)『日本語音声学入門 改訂版』三省堂.
  • 斎藤純男(2010)『言語学入門』三省堂.
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