二重母音や鼻音化などの母音のさまざまな調音方法【語学を楽しむための音声学】

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母音は、調音するときの舌の位置や唇の形によって分類されます。この基本的な調音方法に加えて、同時に付加的な調音が行なわれることがあります。二重母音や鼻音化などの付加的な調音について説明します。

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長母音と短母音

母音の調音の最初から最後まで、調音器官が同じ構えをしていて、同じ音色が続くものを単母音といいます。単母音は、長くも短くも発音できますが、母音の持続時間の長さの違いが、音声を区別する上で重要なときは、これを長母音(ちょうぼいん)、短母音(たんぼいん)として分類します。

国際音声記号(IPA)では、通常より長い音声を表わすために長 [ ː ] と半長 [ ˑ ] の記号があって、[eː][eˑ] のように母音の後に付けます。また、通常より短い音声を表わすために超短 [  ̆ ] の記号があって、[ĕ] のように母音の上に付けます。

補足

日本語では、単母音と短母音がどちらも「たんぼいん」となるので、間違わないようにしましょう。

二重母音と連母音

二重母音

単母音に対して、調音の途中で調音器官の位置が変化して、最初の音色とは違う音色で終わる母音を二重母音(にじゅうぼいん)といいます。最初の母音から、なめらかに連続して最後の母音へ変化するのが特徴です。また、二重母音は、別々の音節ではなく一つの音節を構成していると考えます。ですから二重母音は、調音の途中で音色が変化しますが一つの母音です。

補足

音節とは、ここでは「ひとつのまとまりだと感じられる音声の連続」と考えてください。

IPAでは、2つの母音を並べて書けば二重母音を表せます。特に二重母音であることを明確に表わしたいときは、2つの母音のうちで発音が際立っていない母音の下に、非音節主音を表わす [  ̯ ] の記号を付けて、[aɪ̯][i̯a] のように表わします。

調音器官の位置が、途中で2回変化すれば、[u̯aɪ̯] のように三重母音となります。例えば中国語の「快」は [kʰu̯aɪ̯] のような三重母音です。

連母音

母音を調音するときに、調音器官の位置が急激に変化して、別々の2つの母音がただ連続しただけになったものを連母音(れんぼいん)といいます。IPAで連母音であることを明確に表わしたいときは、音節境界の記号 [ . ] を使って [a.i] のように表わします。連母音を構成する2つの母音は、それぞれ別の音節に属するのです。

日本語では、二重母音も連母音も現われますが、ゆっくりとした丁寧な発音では、「家」[i.e] のように連母音が現われやすくなります。

鼻音化

母音を調音するときに、同時に口蓋帆が下がって気流が鼻腔に抜けることを鼻音化(びおんか)といいます。また、鼻音化された母音を鼻母音(びぼいん)と呼びます。IPAでは、母音に [  ̃ ] を付けて [ɑ̃] のように表わします。

フランス語やポルトガル語に現われる鼻母音は、広く知られています。

R音化

母音を調音するときに、舌尖が上に反り返ったり、舌が盛り上がったりすると同時に、舌根が後ろへ下がって咽頭との間が狭くなり、rの音のような音色が付け加わることをR音化(Rおんか)といいます。また、このRの音ような音色をR音性と呼びます。IPAでは、母音に [ ˞ ] を付けて [ə˞] のように表わします。

アメリカ英語や中国語に現われるR音化した母音が、広く知られています。

無声化

母音は基本的に、声帯が振動して発音される有声音ですが、声帯を振動させずに発音することがあって、これを無声化(むせいか)といいます。このとき、母音を調音する舌や唇の構えのまま、肺からの気流が口腔の中でほとんど妨げられずに通過します。IPAでは、母音の下に [  ̥ ] を付けて [i̥] のように表わします。

有声であるはずの母音が無声化すれば、母音が脱落したと言うことができます。

このような現象は国語学・日本語学では普通「母音の無声化」と表現されていますが、一般音声学的に言えば、これは明らかに母音の脱落です。

ロシア語音声概説 p.59

また、気流が妨げられないとはいっても、何も音を出さずに通過するのではなく、前後に置かれた子音の摩擦音が発せられることがあり、その場合、無声化した母音の実態は無声摩擦音ともいえます。なお、無声化した母音の前に来る子音は、あとに続く母音の口構えの影響を受けて調音されるため、硬口蓋化したり、円唇化したりすることがあります。このような子音の調音の違いがあるため、母音が無声化されてほとんど発音されなくても、単語の意味を区別することができます。

日本語では、無声子音の間に置かれた狭母音 [i][ɯ] は、ふつう無声化されて、[i̥][ɯ̥] として現われます。

その他の用語について

テンスとラックス

母音を調音するときの、舌や口などの筋肉の緊張の度合いに着目して、母音の違いを説明する考え方があります。緊張の度合いの高いものをテンスまたは張り、緊張の度合いの低いものをラックスまたは緩みといいます。

前舌の狭母音 [i] は緊張の度合いが高く、この緊張を緩めると [ɪ] になるため、[i][ɪ] はテンスとラックスの違いだといえます。[u][ʊ][y][ʏ] にも同じことがいえます。

これらの母音の違いは、次の母音の分類についての記事も参考にしてください。

≫ 3つの基準による母音の分類

舌根の位置の変化

舌の他の部分はほぼそのままの形で、舌根の部分を前に出して咽頭を広くするかどうかによって、違った音色の母音を出すことができます。舌根を前に出すかどうかが重要なときは、舌根前進(ぜっこんぜんしん)と舌根後退(ぜっこんこうたい)として区別することがあります。

IPAでは、舌根前進を [  ̘ ]、舌根後退を [  ̙ ] の記号を使って、[i̘][i̙] のように表わします。

参考文献
  • 神山孝夫(2012)『ロシア語音声概説』研究社.
  • 小泉保(2003)『改訂 音声学入門』大学書林.
  • 斎藤純男(2006)『日本語音声学入門 改訂版』三省堂.
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