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タタール語チャレンジ(4日目)【ニューエクスプレスプラス】

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白水社から『ニューエクスプレスプラス タタール語』が2022年12月に発売されて1年が経ちました。

当サイト管理人は、発売直後に購入したものの、ざっと眺めた程度で、ずっと読めずにいました。

2024年1月には同じテュルク諸語の『ニューエクスプレスプラス ウズベク語』が発売されるので、この機会にタタール語を一気に学習することにしました。

タタール語チャレンジの4日目は、第5課と第6課です。タタール語の動詞の現在形と過去形を学習します。

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タタール語チャレンジの進め方

『ニューエクスプレスプラス タタール語』は、白水社から出版された櫻間瑞希さんと菱山湧人さんによるタタール語の入門書です。全20課で構成され、その他に「文字と発音」の章、2課ごとに練習問題があります。

全20課を1日に2課ずつ学習を進めて、その様子を記事にしています。

タタール語文法の概略を説明した後、「日本語文からタタール語の文を作る」練習問題を通して、文法の確認をしていきます。

この記事を通してタタール語に興味を持った方は、ぜひ『ニューエクスプレスプラス タタール語』にチャレンジしてみてください。

櫻間瑞希、菱山湧人(著)
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白水社のサイトには正誤表が掲載されていますので、あわせて利用してください。

注意

この記事の内容に誤りがあっても、本書の著者さまや出版社さまには無関係です。誤りは当サイト管理人によるものです。

第5課

動詞の語幹

タタール語の動詞は、現在や過去などの時制や、受動、使役などの接尾辞を付けて形を変えることによって、さまざまな意味を表します。

この動詞の活用の基礎となる部分を動詞の語幹と呼びます。動詞の語幹の後ろには、さまざまな接尾辞が付くため、本書では語幹を、「」(ハイフン)を付けた形で表しています。

動詞の否定の意味を表す語幹を否定語幹と呼びます。否定語幹は、動詞の語幹に否定の接尾辞 -ма / -мә を付けて作ります。

動詞の否定形のアクセントは、もとの動詞語幹の最後の音節にあるのが基本です。

補足

動詞に付く接尾辞には、(1)新しい動詞語幹を作る接尾辞、(2)動詞の活用形を作る接尾辞、(3)人称の接尾辞があります。

否定の接尾辞は、(1)の新しい動詞語幹を作る接尾辞に分類されます。

動詞の現在形

動詞の現在形は、次のような意味を表します。

  • 現在進行中の動作「~している」
  • 現在繰り返し行なわれている動作「~している」
  • 近い未来に実現される動作「~する」

現在形は、次のような現在形の接尾辞を付けて作ります。

現在形の接尾辞
後舌母音前舌母音
母音で終わる語幹
(最後の母音を取り除く)
-ый
子音で終わる語幹

母音で終わる語幹は、その最後の母音を取り除いてから現在形の接尾辞を付けるので注意してください。

й [j] で終わる語幹には、子音で終わっているので [ɑ] / -ә [æ] が付いて、[jɑ] / [jæ] という発音になります。文字の綴りでは йа / йә のどちらも я で表します。

また、и で終わる語幹は、本来的に [ij] という発音で終わっていると考えられるので、同じように я が付け加わって ия [ijæ] という綴りになります。

у, ю で終わる語幹は、本来的に子音 [w] で終わっていると考えられます。どちらも を付けることになっています。また、у が母音字に挟まれた場合には в [w] を代わりに綴ります。

現在形の否定

「~していない」、「~しない」という現在形の否定は、否定語幹に現在形の接尾辞を付けます。

このとき、否定語幹の最後の母音を取り除いて -ый / -и を付けるので、結果として動詞の語幹に -мый / -ми を付けることになります。

動詞の現在形+人称の付属語

主語が1・2人称のときは、動詞の現在形に人称の付属語を付けます。

人称の付属語は、「タタール語チャレンジ2日目 第1課」で学習しました。

ただし、1人称単数では -мын / -мен ではなく、それが短くなった を付けます。

人称の付属語
後舌母音前舌母音
単数 1人称 мин (-мын) -м(-мен) -м
2人称 син -сың-сең
複数 1人称 без -быз-без
2人称 сез -сыз-сез

また、3人称の人称の付属語はないのですが、3人称複数の場合、条件によっては複数の接尾辞が付くことがあります。

複数の接尾辞
後舌母音前舌母音
鼻音(м, н, ң)以外で終わる名詞 -лар -ләр
鼻音(м, н, ң)で終わる名詞 -нар -нәр

文の中に主語がない場合は、複数の接尾辞が付きます。

主語がある場合は、それが人や動物を表すときは複数の接尾辞を付けても付けなくても構いません。物を表すときは複数の接尾辞を付けません。

第6課

動詞の過去形

動詞の過去形は、次のような意味を表します。

  • 比較的近い過去における動作の終了「~した」

基本的に、話し手にとって直接的な過去(目撃、経験)を表します。

補足

話し手にとって間接的な過去(他人から聞いて知った、後から気付いた)は、第8課で学習する完了形を使って表します。

過去形は、次のような過去形の接尾辞を付けて作ります。

過去形の接尾辞
後舌母音前舌母音
母音・有声子音で終わる語幹-ды-де
無声子音で終わる語幹-ты-те

過去形の否定

「~しなかった」という過去形の否定は、否定語幹に過去形の接尾辞を付けます。

このとき、否定語幹は母音で終わるので、結果として動詞の語幹に -мады / -мәде を付けることになります。

動詞の現在形+人称の接尾辞

主語が1・2人称のときは、動詞の過去形に人称の接尾辞を付けます。

現在形では人称の「付属語」を付けましたが、過去形では人称の「接尾辞」を付けます。違いによく注意してください。

人称の接尾辞
後舌母音前舌母音
単数 1人称 мин
2人称 син
複数 1人称 без
2人称 сез -гыз -гез

名詞の方向格

方向格は、「~へ」のように、主に移動の目標や到達点、動作の受け手を表します。

名詞を方向格にするには、名詞に次のような接尾辞を付けます。

方向格の接尾辞
後舌母音前舌母音
母音・有声子音で終わる語幹-га-гә
無声子音で終わる語幹-ка-кә

名詞には、複数の接尾辞、所有接尾辞、格の接尾辞の順番に接尾辞が付きます。

1・2人称単数と3人称の所有接尾辞の後に方向格の接尾辞を付ける場合には、上の表の接尾辞の代わりに -а / -ә を付けます。

また、このとき、3人称の所有接尾辞と方向格の接尾辞の間に -н- を入れます。

復習のために、所有接尾辞を再び載せておきます。

1・2人称の所有接尾辞
後舌母音前舌母音
単数 1人称 минем -(ы)м -(е)м
2人称 синең -(ы)ң -(е)ң
複数 1人称 безнең -(ы)быз -(е)без
2人称 сезнең -(ы)гыз -(е)гез
3人称の所有接尾辞
後舌母音前舌母音
母音で終わる名詞 -сы -се
子音で終わる名詞

人称代名詞や指示詞の方向格も、同じように接尾辞を付けますが、次の単語は特別な形になります。

人称代名詞指示詞
主格方向格主格方向格
минмиңа бумоңа
синсиңа шулшуңа
улаңа
шушышушыңа
тегетегеңә

練習問題

日本語の文からタタール語の文を作る練習問題を通じて、文法をおさらいしましょう。

(1) 私は明日来ます。

単語
  • мин
  • иртәгә 明日
  • кил- 来る

мин「私は」、иртәгә「明日」までは、並べるだけで大丈夫ですね。

「来ます」は、кил-「来る」の現在形を使って、近い未来に実現される動作を表します。

кил- は前舌母音の単語で、語幹が子音で終わっています。このため、現在形の接尾辞は が付きます。そして、主語の мин に対応した人称の付属語 を付けます。

これで「来ます」が киләм となります。

Мин иртәгә киләм.

(2) 彼はとても速く走ります。

単語
  • ул 彼、彼女
  • бик とても
  • тиз 速い
  • йөгер- 走る

「速く」という副詞的な表現は、тиз「速い」という形容詞をそのまま副詞として使うことができます。

「走ります」は、「走る」という動詞の語幹 йөгер- に、現在形の接尾辞 を付けます。主語は3人称ですから人称の付属語は付けません。

Ул бик тиз йөгерә.

(3) 今日はよく寝ました。

単語
  • бүген 今日
  • әйбәт よい
  • йокла- 寝る

「よく」は、形容詞の「よい」をそのまま副詞として使うことができます。ここでは әйбәт を使ってみましょう。第2課に出てきた яхшы という単語も使えそうです。

「寝ました」は、「寝る」という動詞の語幹 йокла- に過去形の接尾辞 -ды を付けます。

明示されていませんが「私」が主語だと考えられますから、1人称単数の人称の接尾辞 を付けなければなりません。このため、йокладым となります。

文のはじめに、主語 мин を付けてもよいですが、付けなくても「私」が主語であることは分かります。

Бүген әйбәт йокладым.

(4) 昨日マラットは学校に来ませんでした。

単語
  • кичә 昨日
  • Марат マラット〔男性名〕
  • мәктәп 学校
  • кил- 来る

「学校に」は、「来る」という動作の到達点ですから、方向格の接尾辞を付けます。мәктәп「学校」は前舌母音の単語で、無声子音で終わっていますから、接尾辞 -кә を付けます。

「来ませんでした」は、過去形の否定ですね。кил-「来る」に否定の接尾辞 -мә を付けて、過去形の接尾辞 -де を付けます。

主語は「マラット」で3人称単数ですから、人称の接尾辞は付けません。

Кичә Марат мәктәпкә килмәде.

(5) 私たちは毎日大学に通います。

単語
  • без 私たち
  • көн саен 毎日
    • көн 日、昼間
    • саен ~ごとに
  • университет 大学
  • йөр- 通う、歩く

「毎日」は көн саен といいます。көн が「日」、саен が「~ごとに」を意味するので、「日ごとに」ということです。

「大学に」は、университет「大学」に方向格の接尾辞を付けます。ロシア語からの借用語ですから、語末が -ь, -ия, -ие 以外なので -ка という後舌母音の形を付けます。

「通います」は現在形ですね。йөр-「通う、歩く」の現在形は、йөрә ではなく不規則な形 йөри となるようです。これに主語が1人称複数であることを示す人称の付属語 -без を付けます。

Без көн саен университетка йөрибез.

(6) 私たちはカザン・クレムリンに行きます。

単語
  • без 私たち
  • Казан カザン
  • кирмән クレムリン
  • бар- 行く

「カザン・クレムリン」はカザンにある城塞のことで、複合名詞で表します。後ろに来る名詞に3人称の所有接尾辞を付けますから Казан кирмәне となります。

これに方向格の接尾辞を付けますが、Казан кирмәнегә としてはいけません。3人称の所有接尾辞が付いた単語に付ける方向格の接尾辞は -а / -ә という形です。しかも、所有接尾辞と方向格の接尾辞の間には -н- を入れるのでした。

したがって「カザン・クレムリンに」は、Казан кирмәненә となります。

このあたりは難しいですね。

「行きます」は、бар-「行く」に現在形の接尾辞 と1人称複数の人称の付属語 -быз を付けるので、барабыз となります。

Без Казан кирмәненә барабыз.

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