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タタール語チャレンジ(8日目)【ニューエクスプレスプラス】

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白水社から『ニューエクスプレスプラス タタール語』が2022年12月に発売されて1年が経ちました。

当サイト管理人は、発売直後に購入したものの、ざっと眺めた程度で、ずっと読めずにいました。

2024年1月には同じテュルク諸語の『ニューエクスプレスプラス ウズベク語』が発売されるので、この機会にタタール語を一気に学習することにしました。

タタール語チャレンジの8日目は、第13課と第14課です。タタール語の動詞の不定形と動名詞を学習します。

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タタール語チャレンジの進め方

『ニューエクスプレスプラス タタール語』は、白水社から出版された櫻間瑞希さんと菱山湧人さんによるタタール語の入門書です。全20課で構成され、その他に「文字と発音」の章、2課ごとに練習問題があります。

全20課を1日に2課ずつ学習を進めて、その様子を記事にしています。

タタール語文法の概略を説明した後、「日本語文からタタール語の文を作る」練習問題を通して、文法の確認をしていきます。

この記事を通してタタール語に興味を持った方は、ぜひ『ニューエクスプレスプラス タタール語』にチャレンジしてみてください。

櫻間瑞希、菱山湧人(著)
¥3,564 (2024/11/21 12:13時点 | Amazon調べ)

白水社のサイトには正誤表が掲載されていますので、あわせて利用してください。

注意

この記事の内容に誤りがあっても、本書の著者さまや出版社さまには無関係です。誤りは当サイト管理人によるものです。

第13課

動詞の不定形

動詞の不定形は、次のような意味を表します。

  • 名詞の働きをして「~すること」
  • 形容詞と同じように直後の名詞を修飾して「~するための~」
  • 副詞と同じように述語を修飾して「~するために」、「~して」
  • 文末で使われて義務「~すべき」や禁止「~するな」

不定形は、動詞が表す動作そのものを抽象的、一般的に表現した形です。

不定形は、語幹に次のような接尾辞を付けて作ります。

不定形の接尾辞
後舌母音前舌母音
母音で終わる語幹-рга-ргә
子音で終わる語幹-ырга-ергә
子音で終わる語幹
(特別な場合)
-арга-әргә

これらの接尾辞は、不確定未来形の接尾辞に方向格の接尾辞を付けたものです。

子音で終わる語幹の特別な場合というのは、語幹が1音節で、л, р 以外の子音1つで終わる場合です。

不確定未来形の説明も参照してください。

不定形の否定

不定形の否定は、不確定未来形の否定に方向格の接尾辞を付けます。

不確定未来形の否定は、単純に否定語幹をもとにするのではなく、-мас / -мәс となるのでした。ですから、これに方向格の接尾辞 -ка / -кә を付けます。

不定形の用法

動詞の不定形は、いろいろな意味を表します。

基本となるのは、動詞の動作を抽象的・一般的に名詞として表す使い方で、「~すること」のような意味を表します。名詞的用法と呼んだりします。

名詞の直前に置かれて、形容詞のようにその名詞を修飾する使い方もあります。形容詞的用法と呼んだりします。この場合は「~するための~」のような意味を表します。

補足

もっと単純に「~する~」、「~した~」のような意味を表すには、後で学習する動詞の形動詞形を使うようです。

副詞と同じように述語を修飾する使い方もあります。副詞的用法と呼んだりします。「~するために」や「~して」のような意味を表します。

また、不定形が主に文末に使われると、「~すべき」という義務や、「~するな」という禁止の意味を表すことがあります。

不定形を用いた表現

動詞の不定形そのものが、文の中でいろいろな意味を表しますが、不定形がほかの単語と組み合わせて使われて、もっと多様な表現が作られます。

不定形+кирәк「~する必要がある」

кирәк は「必要」という名詞です。動詞の不定形と組み合わせることによって「~する必要がある」という意味を表します。

動作主を明示する場合は、方向格の形になります。

不定形+тиеш「~しなければならない」、「~するはずだ」

тиеш は「~しなければならない」という形容詞です。動詞の不定形と組み合わせることによって「~しなければならない」、「~するはずだ」という意味を表します。

動作主を明示する場合は、主格の形になります。この主語が1・2人称の場合は、тиеш に人称の付属語が付くことがあります。

不定形+мөмкин「~するかもしれない」、「~することができる」

мөмкин は「可能だ」という形容詞です。動詞の不定形と組み合わせることによって、「~するかもしれない」という可能性や、「~することができる」という客観的に可能な事実を表します。

動作主を明示する場合は、主格の形になります。この主語が1・2人称の場合は、мөмкин に人称の付属語が付くことがあります。

ただし、「~することができる」という可能の意味の場合、動作主が方向格の形になることもあるようです。

第14課

動名詞

動名詞は、文の中で動詞が名詞の働きをする形です。「~すること」という意味を表します。

動名詞は、動詞の語幹に -у / -ү を付けて作ります。

語幹が ы, е で終わる場合は、その ы, е を取り除いてから -у / -ү を付けます。

また、語幹が й で終わる場合は、й [j]-у / -ү を合わせて と書きます。

語幹が и で終わる場合は、и の後に ю を付けます。

動名詞の否定

動名詞の否定は「~しないこと」の意味を表します。

否定語幹に -у / -ү を付けるだけです。ですから -мау / -мәү となります。

動名詞の動作主

動名詞が表す動作の動作主は、動名詞に所有接尾辞を付けて表すのが基本です。

さらに、動名詞の前に、動作主を表す名詞・代名詞が所有格の形で置かれることもあります。

このような使い方は、動名詞と同じように「~すること」のような意味を表す不定詞とはかなり異なります。不定詞には、所有接尾辞が付くことはありません。

動名詞に所有接尾辞が付くことで、у, ү の文字が母音に挟まれる場合、у, ү の文字は в の文字に置き換わります。

動名詞を用いた表現

動名詞に格接尾辞が付いたり、後置詞のようなほかの単語と組み合わせて使われて、もっと多様な表現が作られます。

動名詞+өчен「~するために」

өчен は「~のために、~にとって」という意味を表す後置詞です。動名詞と組み合わせることによって「~するために」という動作の目的を表す表現になります。

疑問

「~するために」という目的を表す表現は、動名詞+өчен のほかに、動詞の不定形を副詞的に使うことでも表すことができました。

これらの表現が表す意味合いに、どのような違いがあるのかはよくわかりません。ニュアンスの違いや用法の違いについて言及があれば良かったと感じます。

動名詞+сәбәпле「~するので」

сәбәпле は「~のため、~のせいで」という意味を表す後置詞です。動名詞と組み合わせることによって「~するので」という原因を表す表現になります。

動名詞+方向格+карамастан「~するにもかかわらず」

карамастан は「~にもかかわらず」という意味を表す後置詞です。この前に置かれる名詞などは方向格の付いた形になります。動名詞と組み合わせることによって「~するにもかかわらず」という表現になります。

疑問

карамастан は、動詞 кара-「見る」に、不確定未来形の否定の接尾辞 -мас が付いて、さらに起点格の接尾辞 -тан が付いたものと考えられます。

不確定未来形の否定の接尾辞が付いた形は、未来の形動詞と考えるのがよいのかもしれません。

動名詞+бар「~するかもしれない」

бар はこれまでに何度も学習した「ある、いる」という単語ですね。動名詞と組み合わせることによって「~するかもしれない」という可能性のを表す表現になります。

可能性を表す表現には、不定形+мөмкин という表現もありました。

疑問

可能性を表す表現として、不定形+мөмкин と、動名詞+бар が出てきました。

この2つの表現には、おそらくニュアンスの違いがあるのだと思います。自由に置き換え可能なのかどうかなど、もう少し説明があるとよかったです。

練習問題

日本語の文からタタール語の文を作る練習問題を通じて、文法をおさらいしましょう。

(1) イギリス人はお茶を飲むことが好きです。

単語
  • инглиз イギリス人、イギリス(の)
  • чәй
  • эч- 飲む
  • ярат- 愛する、好む

まず主語となる「イギリス人」は、「あるイギリス人」ではなく、「イギリス人は一般に」のような意味ですね。複数形が適切なので инглизләр です。

「お茶を飲む」の「お茶」は、特定のものではありません。また、「飲む」の直前に置くことができますから、対象格の形にする必要はありません。

「~することが好き」という意味を表すには、「~することを好む」という表現を使います。

この場合の「~すること」には、動詞の不定形を使うようです。эч-「飲む」に -ергә を付けて эчергә となります。

「好む」は現在形で良さそうです。ярат- は語幹が子音で終わる後舌母音の単語ですから、 を付けて ярата です。主語が3人称の「イギリス人」ですから人称の付属語は付ける必要はありませんが、複数なので яраталар のように複数であることを表す語尾を付けることもできます。模範解答では付けていません。

Инглизләр чәй эчергә ярата.

(2) 座るための場所がない。

単語
  • утыр- 座る
  • урын 場所、順位
  • юк ない、いない

「~するための~」という形容詞的な表現は、動詞の不定形を使う典型例です。

「座るための場所」で、утырырга урын と表せます。

これに юк「ない」を付ければ完成です。

Утырырга урын юк.

(3) 私たちは大学生たちと話すために来ました。

単語
  • без 私たち
  • студент 大学生
  • белән ~と
  • аралаш- 会話する
  • сөйләш- 話す、会話する
  • кил- 来る

「~するための~」という形容詞的な使い方ではなく、「~するために」という副詞的な使い方です。

動詞の不定形そのものを使って表す方法と、動名詞+өчен による方法を学習しました。ここでは、動詞の不定形で表してみましょう。

「話す、会話する」は аралаш-сөйләш- という動詞を使うことができます。これらの不定形は аралашырга または сөйләшергә となります。

「大学生たちと」は、студент「大学生」を複数にして студентлар となって、これに「~と」を表す後置詞 белән を続ければよいでしょう。

最後の「来ました」は、кил-「来る」の過去形 килде に、主語が「私たち」ですから1人称複数の人称の接尾辞 を付けます。килдек となりますね。間違えて人称の付属語 -без を付けないようにしましょう。

疑問

「~するために」を、動名詞+өчөн を使って、аралашу өчен килдекаралашуыбыз өчен килдек などと言えるのかどうかは分かりません。

Без студентлар белән аралашырга (сөйләшергә) килдек.

(4) 修士課程に入るべきか、入らないべきか?

単語
  • магистратура 修士課程
  • кер- 入る

「~すべき」は、動詞の不定形で表現できます。

「入るべき」は керергә、「入らないべき」は кермәскә ですね。それぞれに疑問の付属語を付けると「入るべきか、入らないべきか」を表すことができます。

「修士課程に」は、方向格の形にしましょう。

Магистратурага керергәме, кермәскәме?

(5) 私は牛乳が飲みたいです。

単語
  • мин
  • сөт 牛乳
  • эч- 飲む
  • телә- 望む、祈る

「~したい」は、「~することを望む」のように表現できます。この「~すること」は動詞の不定形でよいでしょう。

эч-「飲む」の不定形は эчәргә となります。

「望みます」は телә-「望む」の現在形に1人称単数の人称の付属語を付ければよいですね。語幹が母音で終わる動詞の現在形は、最後の母音を取り除いてから現在形の接尾辞を付けます。

ですから тел-телим となります。

Мин сөт эчәргә телим.

(6) あなたはもっとたくさん野菜を食べる必要があります。

単語
  • сез あなた
  • күп 多い
  • яшелчә 野菜
  • аша- 食べる
  • кирәк ~する必要がある(動詞の不定形と)

「もっとたくさん野菜を」は、「より多くの野菜を」のように「多い」の比較級で表すことができそうです。

比較級は -рак / -рәк を付ければよいので、күпрәк となりそうですが、к, п で終わる形容詞はこれを г, б に変えるのでした。このため күбрәк となります。

「~する必要がある」は、動詞の不定形+кирәк で表すことができました。аша-「食べる」の不定形は ашарга です。

これで Сез күбрәк яшелчә ашарга кирәк. という文ができあがりましたが、これでは間違いです。不定形+кирәк の表現では、その動作を行なう動作主は方向格の形で表さなければなりません。

「食べる必要がある」のは「あなた」ですが、сез ではなく сезгә としなければならないのですね。なかなか難しいです。

Сезгә күбрәк яшелчә ашарга кирәк.

(7) リーダーになることが重要だ。

単語
  • лидер リーダー
  • бул- なる
  • мөһим 重要な

この問題でも「~すること」を、動詞の不定形で表すか、動名詞で表すかが悩みどころです。どちらも可能であるように感じます。

模範解答は動名詞を使っていますので、動名詞で文を組み立ててみましょう。

「リーダーになる」はそのまま лидер бул- でよさそうです。

「なること」を動名詞で表すと、булу ですね。ですから全体で Лидер булу мөһим. となります。

これを動詞の不定形を使って表すと Лидер булырга мөһим. となりますね。

Лидер булу мөһим.

(8) 君が私のことを好きじゃないのは知っている。

単語
  • мине 私を(мин の対象格)
  • ярат- 愛する、好む
  • бел- 知る

「好きじゃないのは知っている」は「好まないことを知っている」ということですね。「好まないこと」を動名詞で表してみましょう。

ярат- を否定にすると яратма- です。動名詞にするので を付けて яратмау となります。

「好まない」のは「君」ですから、2人称単数の所有接尾辞を付けます。у は子音で終わっていると考えますから -ың を付けて яратмауың となりそうですが、у の文字が母音に挟まれるので в と綴ります。このため яратмавың となります。

これで終わりではありません。「好まないことを」の「~を」を対象格の形で表します。-ны を付けて яратмавыңны て出来上がりです。

「君が」は、яратмавыңны の中に2人称単数の所有接尾辞で表したので、人称代名詞で明示的に表す必要はありません。

「私のことを」は мин の対象格で мине でよいですね。

最後の「知っている」は、「私が知っている」ということなので、бел-беләм となります。現在形の接尾辞と、1人称単数の人称の付属語を付けました。

Мине яратмавыңны беләм.

櫻間瑞希、菱山湧人(著)
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