2022年度から放送大学で「初歩のロシア語(’22)」というロシア語講座が始まりました。講座にあわせて放送テキストが出版されています。このテキストのメリットとデメリットを紹介します。テキストのメリットを生かして、効果的にロシア語を学習しましょう。
「初歩のロシア語」とは
「初歩のロシア語(’22)」とは、通信制大学である放送大学で2022年度から始まったロシア語講座です。放送大学に入学しなくても、BS放送を受信できれば、日本全国どこからでも誰でも、講座を視聴できます。
講座は、全15回の授業で構成されています。1回の講座は45分間の放送です。
放送日程などは、次の記事で解説していますので参考にしてください。
放送大学教育振興会が放送テキストを発行していて、インターネットで購入できます。全311ページあって、結構なボリュームがあります。
では、このテキストのメリット(よい点)とデメリット(悪い点)を2つずつ挙げてみます。
テキストのメリット
「初歩のロシア語(’22)」のテキストのメリットとして、次の2点を挙げておきます。
たった15課で初級ロシア語の全体像を把握できる
各課は、初級者向けの「基礎テクスト」、初級から中級者向けの「発展テクスト」、中級者向けの「おまけテクスト」で構成されています。
全15課には、初級ロシア語に必要な文法事項の大部分が含まれています。ですから、一通り学習を終えると、初級ロシア語の全体像を把握することができます。各課で扱っている文法項目は次の通りです。
これだけの文法項目を15回で学習するのは、かなり大変です。ですから、まったくのロシア語初心者は「基礎テクスト」だけを学習するのがよいです。それでも毎回の学習項目を理解して覚えるのは大変だと思います。
一度にすべてを理解することはあきらめて、一通り「基礎テクスト」の学習を終えたら、再びはじめに戻って「基礎テクスト」と、余裕があれば「発展テクスト」を学習すると、文法の理解が進むと思います。
「おまけテクスト」には、解説はなく、日本語訳が付いているだけです。「発展テクスト」までを終えた方が、辞書を引きながら文章(会話)の読解にチャレンジするのがよいでしょう。
ロシア文学についての情報に触れられる
続いて、メリットの2つめです。
講師の沼野恭子先生は、ロシア文学が専門です。テキストには「ロシア文学万華鏡」という文学コラムが掲載されています。コラムとは言っても、毎回4ページほども解説されています。
トルストイやトゥルゲーネフといった著名な作家から現代の作家にいたるまで、それぞれの作家や作品の特徴や背景などが解説されています。
なお、放送では、テキストから抜粋して3~4分程度の解説となっています。
テキストのデメリット
次に、テキストのデメリットとして、次の2点を挙げておきます。
単語表がテキスト出現順になっている
テキストの巻末には、各課に出てきた単語を集めた「単語表」が載っています。この単語表は、アルファベット順ではなく、テキストに出てきた順番になっています。
ですから例えば、нра́виться という単語がテキストのどこに出てきたか、と探すのは大変です(実際は12課に出てきます)。単語表はアルファベット順にして、нра́виться (12) のように記載してあるとよかったと思います。
辞書を持たずに学習する方も多いでしょう。ぜひ、自分で単語集を作りながら学習してみてはどうでしょうか。紙に書くにしても、パソコンで入力するにしても、キリル文字の練習になりますし、単語の記憶にも役立つと思います。
私のロシア語の学習の一環として、新しく単語集を作成しました。次の記事で公開しています。作成した単語集の詳細を確認して、無料でダウンロードできます。
文字と発音の学習は不十分
デメリットの2つめは、文字と発音の学習についてです。
語学の入門に欠かせない文字と発音の学習については、次のようにテキストで取り上げられています。
発音の規則(母音)では、アクセントの置かれないときの母音の発音変化を学習します。また、発音の規則(子音)では、子音の無声化と有声化を学習します。
ロシア語の入門段階では、繰り返し発音練習を行なって、それぞれの子音や母音の音の響き、単語に置かれるアクセントや文章中の音の高低の変化を習得する必要があります。
放送の第1課から第4課までで行なわれる発音の説明は丁寧ですが、発音練習の時間は決して十分とはいえません。
この点では、NHKのラジオ講座の入門編「まいにちロシア語」の4月や10月の放送を併用するのがよいと思います。半年間の講座のスタートである4月と10月のNHKラジオ講座では、文字と発音の学習に比較的多くの時間を割いています。
まとめ
放送大学のロシア語講座「初歩のロシア語(’22)」のテキストのメリットとデメリットを挙げてみました。
初心者が初級ロシア語の全体像を把握するのにはよいテキストだと思います。
ただし注意点として、全15課を1度学習しただけではロシア語は身に付きません。どのようなテキストでも同じですが、繰り返して学習する必要があります。テキストには中級者向けの「おまけテクスト」もあるので、学習の進み具合に応じて活用できます。
発音練習に十分な時間は取られていないので、発音学習にはNHKラジオ講座をあわせて活用するのが効果的だと思います。
また、巻末の単語表は、テキストの出現順に単語が並んでいるので活用が難しいです。自分で単語集を作りながら学習するとよいと思います。
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