形容詞には、修飾的用法と述語的用法の2つの使い方があります。
修飾的用法は、「おもしろい本」のように、名詞の修飾語として使うものです。述語的用法は、「この本はおもしろい」のように、文の中で述語として使って、主語の名詞を説明するものです。
ロシア語の形容詞には、長語尾形と短語尾形という形がありますが、修飾的用法には、形容詞の長語尾形しか使いません。述語的用法では、形容詞の長語尾形も短語尾形も使うことができ、その使い分けには傾向があります。
しかし、使い分け方はあくまでも傾向であって、確かな基準はありません。
学習する中で短語尾形に出会ったときに、その都度、短語尾形の使い方を覚えていくのが効率的です。
形容詞の概要
形容詞は、人や物、事の性質や特徴、関係性を表す単語で、名詞を修飾したり、述語として使われたりします。
ロシア語の形容詞は、その表す意味に着目すると、性質形容詞、関係形容詞、所有形容詞に分類することができます。
また、形容詞の形や変化の仕方に着目すると、長語尾形と短語尾形と呼ばれる2つの形に分類することができます。
長語尾形には、次のような特徴があります。
また、短語尾形には、次のような特徴があります。
形容詞の特徴をまとめると、次のようになります。
修飾的用法 | 述語的用法 | ||
---|---|---|---|
性質形容詞 | 長語尾形 | ○ | ○ |
短語尾形 | ✕ | ○ | |
関係形容詞 | 長語尾形 | ○ | ○ |
所有形容詞 | ほぼ長語尾形 | ○ | ✕ |
この後の説明で、単語の中の赤字の母音字は、その母音にアクセントがおかれることを表しています。
名詞の修飾語として(修飾的用法)
形容詞は、名詞の修飾語として使われます。この使われ方を、修飾的用法(しゅうしょくてきようほう)や限定的用法などといいます。この場合、形容詞の長語尾形が使われ、短語尾形は使われません。
形容詞は、修飾する名詞の前におかれるのが原則です。そして、修飾する名詞の性・数・格に合わせて、同じ形に変化します。
形容詞 интересный「おもしろい」は、修飾する名詞 книга「本」の直前に置かれています。
また、книга は女性名詞です。Это …「これは~だ」という文の中で、単数主格の形になっています。
このため интересный は、книга に合わせて女性・単数・主格の形 интересная に変化しています。
述語として(述語的用法)
形容詞は、文の中で述語としても使われます。この使われ方を、述語的用法(じゅつごてきようほう)といいます。
この文の主語は эта книга「この本」で、これがどのような本なのかを説明するために、述語として интересный「おもしろい」が使われています。
книга は女性名詞で、単数・主格ですから、これに合わせて女性・単数・主格の形 интересная に変化しています。
述語的用法には、形容詞の長語尾形も短語尾形も使われます。このため、長語尾形と短語尾形のどちらを使うか、使い分けが問題になります。
大まかな使い分け方には、次のようなものがあります。
長語尾形と短語尾形の使い分けは、ふつう短語尾形を使うように決まっている形容詞以外は、あくまでもそのような傾向があるというだけで、確かな基準はありません。
ふつう短語尾形を使うもの
形容詞の中には、短語尾形しか使わないものがあります。
рад「うれしい」や должен「~しなければならない、~するはずだ」は、短語尾形しか存在しない形容詞です。
また、長語尾形も存在するものの、短語尾形とは違う意味を表す形容詞もあります。
「病気だ」という意味を表すには、短語尾形の болен を使います。
長語尾形の больной は、修飾的用法で「病的な、病弱な」として使われますが、述語的用法では使われません。上の例では、形容詞が名詞(男性名詞)として使われて、「病人、患者」の意味になっています。
恒常的性質、一時的性質
長語尾形は恒常的な性質を、短語尾形は一時的な性質を表す傾向があります。
река は「川」という女性名詞、спокойный は「穏やかな」という形容詞です。
長語尾形 спокойная を使った文では、恒常的な性質として「いつも穏やか」なニュアンスが現われます。
一方、短語尾形 спокойна を使った文では、例えば「昨日までは流れが速かったけれど、いまは穏やか」だというニュアンスを表したりします。
絶対的性質、相対的性質
短語尾形は、相対的な性質や特徴を表すことがあります。まず、例を挙げます。
長語尾形 молодой「若い」を使った文は、子どもだったり高校生だったりなど、絶対的な若さ・年齢を意識して、「彼は若い」と表す文です。
これに対して短語尾形 молод を使った文は、彼の絶対的な若さ・年齢を問題にしているのではありません。例えば、「総理大臣をやるには若すぎる」のように、対象となるものや状況に対して「若い、若すぎる」ということを表しています。
靴や洋服を選んでいて、「(私には)小さい」という状況のときにも短語尾形が使えます。
話しことば、書きことば
長語尾形と短語尾形の使われる文体には、違いがあると言われます。
書きことばでは短語尾形が好まれます。
一方、長語尾形は、話しことばでも書きことばでも使われる中立的な表現ですが、会話では長語尾形が好まれる傾向があるようです。
ですから、短語尾形しか存在しない形容詞や、ふつう短語尾形を使う形容詞をしっかりと学習して、それ以外は、長語尾形を使うようにすれば、大きな間違いはありません。
形容詞の使い方の注意点
形容詞の使い方について、少し注意点があります。
主語が単数の вы のとき
形容詞の述語的用法で、主語が вы のときには、少し注意が必要です。
人称代名詞の вы には、単数の вы「(敬称の)あなた」と、複数の вы「(親称の)きみたち、(敬称の)あなたたち」の意味があります。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
親称 | きみたち | |
敬称 | あなた | あなたたち |
вы が単数の主語「あなた」を表すとき、述語の形容詞は、長語尾形ならば単数形になります。このため、主語の вы が表す人が男性であるか女性であるかによって、形容詞も男性形か女性形に変化します。
一方、述語の形容詞が短語尾形ならば、複数形になります。
述語の造格について
「~は~だ」や「~は~になった」のような文では、述語部分におかれる名詞や形容詞は、現在形では主格、過去形や未来形では造格になるのが基本です。
この造格は、述語で表している名詞や形容詞が、一時的・相対的な状態であることを意味しています。
述語部分が名詞の場合は、次のような文になります。
述語部分が形容詞の場合も、基本的には同じです。
ただし、形容詞が述語となるときには、述語的用法で説明したように、一時的・相対的な性質を表すには短語尾形を使うという選択肢もあります。
実際には、長語尾の造格形よりも、短語尾形を使うことの方が多いようです。
なお、主語が это の場合は、述語の形容詞はいつでも主格になります。
名詞の主格と造格の使い方については、次の記事でも説明していますので参考にしてください。
まとめ
形容詞の使い方について説明しました。
形容詞には、修飾的用法と述語的用法の2つの使い方があります。
修飾的用法は、「おもしろい本」のように、名詞の修飾語として使うものです。修飾的用法には、形容詞の長語尾形しか使いません。
また、述語的用法は、「この本はおもしろい」のように、文の中で述語として使って、主語の名詞を説明するものです。述語的用法では、形容詞の長語尾形も短語尾形も使うことができるので、その使い分けが重要になります。
このような長語尾形と短語尾形の使い分けは、あくまでもそのような傾向があるというだけで、確かな基準はありません。
学習する中で短語尾形に出会ったときに、その都度、短語尾形の使い方を覚えていくのが効率的です。
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