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ロシア語の定代名詞と相互代名詞【初級ロシア語】

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ロシア語の定代名詞について説明します。

весь は、всёвсе としてよく使われるので、格変化を含めて確実に覚える必要があります。сам は、いろいろな名詞について、「それ自身」のように強調します。

形容詞と同じように変化する定代名詞がいくつかあります。その中で、самыйкаждый はよく使われるので、優先的に学習するとよいでしょう。

また、「お互いに」を意味する друг друга についてもあわせて説明します。

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代名詞とは

代名詞は、文の中で同じ名詞を繰り返して使わずに、名詞の代わりに使う単語です。その名詞が表す人や物・事を受けたり、指し示したりします。

代名詞にはいろいろな分類方法がありますが、ロシア語の代名詞は、次の9つに分類されることが多いようです。

  • 人称代名詞
  • 再帰代名詞
  • 所有代名詞
  • 指示代名詞
  • 疑問代名詞
  • 関係代名詞
  • 不定代名詞
  • 定代名詞
  • 否定代名詞

このほかに、相互代名詞を分類に加えることがあります。このサイトでは、相互代名詞を定代名詞と合わせて説明します。また、再帰代名詞は人称代名詞と合わせて説明します。

代名詞の基本的な働きは、名詞の代わりとなることですが、実際には、形容詞の代わりとなったり、数詞や数量詞の代わりとして使われる単語を代名詞に含めて考えることもあります。

ここでは、名詞の代わりをする単語のほか、形容詞の代わりをする単語も代名詞に含めて考えます。数詞や数量詞の代わりをする単語は、数詞・数量詞の仲間として扱います。

補足

数詞や数量詞の代わりをする単語の例として、сколько「いくつの」があります。この単語を疑問代名詞として扱う場合もありますが、ここでは疑問数量詞として扱います。あとに続く単語が生格形になるなど、数量詞の性質を強く持っているからです。

定代名詞とは

ロシア語の代名詞には、定代名詞(ていだいめいし)と伝統的に呼ばれる単語があります。

複数の人や物、事の中から、その一部または全体に着目して表わす代名詞です。特定の一部であること、または、全体であることを示して、ほかと区別して限定する働きがあります。その意味で、特定代名詞や限定代名詞といってもよいかもしれません。

典型的な定代名詞として весь, сам があります。

また、形容詞と同じように格変化する定代名詞に самый, каждый, всякий, любой, другой, иной があります。これらは辞書や参考書によっては形容詞として扱われることがありますし、形容詞だと考えても問題ありません。

весь「すべての、~全体」

定代名詞 весь の基本的な意味は「すべての」です。関係する名詞の性・数・格にあわせて形が変わります。

весь には、名詞と一緒に使われて「すべての~」や「~全体」という意味を表す場合と、単独で使われて「すべての人」、「すべての物・事」という意味を表す場合があります。

весь の格変化

весь は、次のように、性・数・格による変化をします。

定代名詞 весь の格変化
単数複数
男性中性女性
主格 весь всё вся все
対格 不活動体=主格
活動体=生格
=主格 всю 不活動体=主格
活動体=生格
生格 всего всей всех
前置格 всём всей всех
与格 всему всей всем
造格 всем всей всеми

基本の形である単数・男性・主格は весь /vʲesʲ/ で、この е は出没母音です。これ以外の変化形では、母音で始まる語尾が付くので、この е が消えてしまいます。このため в が無声化して、[f] として発音されます。

また、単数・中性・主格の всё は、一般的な文章では все と綴られることがあります。複数・主格の все と間違わないように注意が必要です。

補足

весь の変化の語尾を、音(音素)で表すと、次のようになります。

音素による весь の格変化語尾
単数複数
男性中性女性
主格 -∅ -/o/ -/a/ -/e/
対格 不活動体=主格
活動体=生格
=主格 -/u/ 不活動体=主格
活動体=生格
生格 -/evo/ -/ej/ -/ex/
前置格 -/om/ -/ej/ -/ex/
与格 -/emu/ -/ej/ -/em/
造格 -/em/ -/ej/ -/emʲi/

語幹は、単数・男性・主格が /vʲesʲ/- で、そのほかは /vsʲ/- [fsʲ] です。つまり、語幹末は /sʲ/ という軟子音で終わります。

所有代名詞の мойтвой の語尾と似ていますが、複数のすべての形と、単数の男性・中性の造格の形が、и /i/ ではなく、е /e/ で始まっていることに注意してください。

весь の形容詞的用法

весь は、名詞と一緒に使われると、「すべての~」や「~全体」という意味を表します。

単数名詞と一緒に使われる場合と、複数名詞と一緒に使われる場合とで、表す意味が違うので、注意してください。

  • весь дом「家中、家全体」
  • все дома「すべての家、あらゆる家」

дом は「家」という男性名詞です。複数形は домы ではなく、例外的に дома となる単語です。

単数形の весь дом は、「一つの家の、一部分ではなく全体」を表します。一方、複数形の все дома は、「複数あるすべての家」を表します。

весь の名詞的用法

весь は、名詞を伴わずに、単独で使われることもあります。この場合、使われるのは、単数・中性形と、複数形です。

単数・中性形の всё は、「すべての物・事」という意味を表します。また、複数形は「すべての人」という意味を表します。

  • Он всё знает. 彼は何でも知っている。
  • Все об этом знают. 皆がそのことについて知っている。

1つめの文の всё は、単数・中性・対格形です。「すべての事を」という意味です。

2つめの文の все は、複数・主格形です。「すべての人が」という意味です。об этом は、前置詞 о に指示代名詞 это の単数・中性・前置格が続いたもので、「それについて」、「そのことについて」を表します。ооб に変わっていることに注意してください。

また、всёвсе の生格形である всеговсех が、形容詞や副詞の比較級と一緒に使われて、最上級の意味を表すことがあります。「すべての物より~」、「すべての人より~」のように比較することで、最上級の意味を表すことができます。

詳しくは、次の記事で説明していますので参考にしてください。

≫ ロシア語の形容詞・副詞の最上級

сам「~自身」

сам は、「~自身」、「~自体」、「~が自分で」のような意味を表す定代名詞です。

名詞や代名詞で表わされる人を強調する役割を果たします。

сам の格変化

сам は、強調する名詞や代名詞と同じ格になります。

格変化は次の表の通りで、主格・対格は名詞のように、それ以外の格は形容詞のような語尾が付きます。

定代名詞 сам の格変化
単数複数
男性中性女性
主格 сам само сама сами
対格 不活動体=主格
活動体=生格
=主格 саму 不活動体=主格
活動体=生格
生格 самого самой самих
前置格 самом самой самих
与格 самому самой самим
造格 самим самой самими

сам の用法

сам を使った例文をいくつか挙げます。

  • Он сам винават. 彼自身が悪い。(主格)
  • Я видел их самих. 私は彼ら自身に会った。(対格)
  • Ещё нет его самого. 彼自身がまだ来ていない。(生格)
  • Мы говорил о ней самой. 私たちは彼女自身について話した。(前置格)
  • Ему самому нужно делать это. 彼は自分でそれをしなければならない。(与格)
  • Я говорил с ним самим. 私は彼自身と話した。(造格)

сам は、「~自身」という意味をもつため、再帰代名詞 себя と混同しがちですが、себя とは違って、主格でも使われることに注意してください。

さらに、самсебя とともに使われることもあります。

  • Она так сказала самой себе. 彼女は自分自身にそう言った。

この例の場合は、себе「自分自身に」という意味をさらに強調しています。

形容詞変化をする定代名詞

весь, сам のほかに、形容詞変化をする定代名詞がいくつかあります。

ここでは、代表的なものとして、самый「まさにその」, каждый「それぞれの」, всякий「あらゆる」, любой「任意の」、другой「別の」、иной「別の」について説明します。

これらは形容詞の長語尾形の変化をするため、辞書によっては、定代名詞ではなく、形容詞に分類されていることがあります。特に、любой, другой, иной は形容詞として扱われることが多いようです。

самый「まさにその」

самый は「まさにその」のように、そのもの自身であることを強調します。

さきほど説明した定代名詞 сам としっかり区別するようにしてください。特に、アクセントの位置も違いますので注意してください。

指示代名詞 этоттот と一緒に使われることが多いです。

  • Она говорила об этой самой книге. 彼女が言っていたのはまさにこの本のことだ。
  • Это тот самый человек, который нам нужен. これこそ私たちが必要とする人間だ。

また、時や場所を表わす名詞と一緒に使われて、時間や場所の限界点であることを強調します。

  • Он работал до самого смерти. 彼は死ぬ間際まで働いた。
  • Дом стоит у самого моря. 家は海のすぐそばに立っている。

そのほか、形容詞の最上級「最も~だ」という表現で、形容詞の原級と一緒に使われます。

  • Байкал — самое глубокое озеро в мире. バイカル湖は世界で最も深い湖だ。
  • Она самая красивая в мире. 彼女は世界で最も美しい。

詳しくは、次の記事で説明していますので参考にしてください。

≫ ロシア語の形容詞・副詞の最上級

каждый「それぞれの」

каждый は、「それぞれの」のように、複数の人や物について、ひとつひとつ個別的に焦点を当てて表現する定代名詞です。

単数形の名詞と一緒に使うのが基本です。

  • Каждое слово в тексте мне было знакомо. テキストのどの単語も私は知っていた。

次のように、対格形を使って時を表わす表現がよく使われます。

  • каждое утро「毎朝」
  • каждый день「毎日」
  • каждую неделю「毎週」
  • каждую субботу「毎週土曜日に」
  • каждый месяц「毎月」
  • каждый год「毎年」

「個数詞+名詞」と一緒に使われるときには、複数形が使われます。

  • каждые два дня「1日おきに、2日ごとに」

день「日」は、個数詞 два「2」が付いて単数生格形の дня になっています。この два дня は全体として対格の役割をしています。これに複数対格形の каждые が付いています。

всякий「あらゆる」

всякий は、「あらゆる」のように、複数の種類の人や物がそろっていることを表わします。この場合は、ふつう複数形です。

  • В этом магазине есть всякие товары. この店にはあらゆる品物がおいてある。
  • Всякие вещи могут случиться в жизни. 人生にはいろいろなことが起こり得る。

また、「どんな~も」のように、複数の人や物について、その中の任意のひとつ、どれを選んでも当てはまることを表わします。この場合は、ふつう単数形です。

  • Он потерял всякую надежду. 彼はどんな希望も失った。
  • Всякий человек стремится к лучшему. どんな人もよりよいものを切望する。

любой「任意の」

любой は、「任意の」、「どんな~も」のように、複数の人や物について、その中の任意のひとつ、どれでもよいことを表わします。多くの場合、単数形で使われます。

  • Вы можете взять любую книгу. あなたはどの本でも(好きな本を)借りられます。
  • Любая дорога где-нибудь кончается. どんな道でもどこかで終わる。

всякий にも「どんな~も」という意味がありますが、любой のほうが、「任意に選べる」という意味合いが強く表われます。

また、次のように、複数形で使われる言い回しもあります。

  • в любых условиях「いかなる条件でも」

другой「ほかの」

другой は、「ほかの、別の」のような意味を表わします。次に説明する иной と似た意味合いをもちますが、другой のほうが、より広く一般的に使われる傾向があります。

  • Он в другой комнате. 彼は別の部屋にいる。
  • Дайте мне другой карандаш. ほかの鉛筆をください。

また、日本語では「次の」のように訳すとよい場合もあります。

  • В другой раз поговорим. 次の機会に話し合いましょう。

иной「ほかの」

иной は、「別の、ほかの」のような意味を表わします。другой とかなり似た意味合いを持ちますが、少し書きことば的な単語のようです。

また、「別種の」のように違う種類であることを表わしたり、あるものとは全く違うことが強調されるニュアンスがあります。

  • Это иное дело. それは別のことだ(それは話が別だ)。
  • Иного пути нет. ほかの道はない(それしか方法がない)。
  • У каждого человека иное мнение. それぞれの人には異なる意見がある。

друг друга「お互いに」

さきほど другой という定代名詞を説明しました。ここでは、それに関連して друг друга ということばを説明します。

друг друга は、一般的に相互代名詞や相互再帰代名詞と呼ばれることが多く、日本語では「お互いに」と訳せるような単語です。イディオム(慣用句)とみなす場合もあります。

補足

друг друга は、代名詞の分類のひとつとして「相互代名詞」とされる場合や、「再帰代名詞」として説明される場合もあります。ここでは、定代名詞 другой と関連があるため、定代名詞の項目に続けて説明することにしました。

друг という単語を2つセットで使うことによって、「お互いに」、「お互いを」のような意味を表わします。

1つめの друг は、いつでもそのままの形(主格)で使います。

2つめの друг は、文の中の役割に応じて格変化して使います。変化は、「友人」という意味の друг の単数形と同じです。

また、「お互いが」のように、文の主語となることはありません。このため、主格の形はありません。辞書には、друг の見出し語として載っていて、参考書などでは、対格・生格形の друг друга という形で代表されます。

друг другаの格変化
主格
対格 друг друга
生格 друг друга
前置格 друг о друге
与格 друг другу
造格 друг другом

2つめの друг にアクセントがおかれます(1つのめの друг に副アクセントがおかれることもあります)。

例文を見てみましょう。

  • Они любят друг друга. 彼らはお互いに愛している。(対格)
  • Они боятся друг друга. 彼らはお互いに恐れている。(生格)
  • Они помогают друг другу. 彼らはお互いに助け合っている。(与格)
  • Они довольны друг другом. 彼らはお互いに満足している。(造格)

друг друга が前置詞と一緒に使われるときには、前置詞は2つの друг の間におかれます。ただし、話しことばでは друг друга の前に前置詞がおかれることもあるようです。

  • Мы бываем друг у друга. 私たちはお互いに行き来している。(生格)
  • Они заботятся друг о друге. 彼らはお互いに相手を気遣っている。(前置格)
  • Мы разговаривали друг с другом. 私たちはお互いに話し合った。(造格)

これらの例を見ると、日本語では副詞的に「お互いに」と訳せる場合が多いようです。

друг друга を正しく変化させるためには、次のことに注意する必要があります。

  • 前置詞と一緒に使われていれば、その前置詞が要求する格に変化させる
  • 動詞の目的語になっていれば、その動詞が要求する格に変化させる
補足

друг другадруг は、歴史的に другой と関連のある単語です。

другой「ほかの」は、現在では長語尾形の変化しかありませんが、古東スラヴ語の時代にさかのぼった drugŭ という単語には、長語尾形と短語尾形の両方の変化がありました。その短語尾形の男性形が引き継がれてきたのが現在の друг です。

このため、друг をペアで使うことで、「他方が他方を」、「他方が他方に」のように、「お互いに」の意味を表わすのです。

また、古東スラヴ語の時代の drugŭ には、名詞として「友人」という意味があって、これが現在の друг「友人」へとつながっています。

まとめ

ロシア語の定代名詞について説明しました。

весь は、всёвсе としてよく使われるので、格変化を含めて確実に覚える必要があります。сам は、いろいろな名詞について、「それ自身」のように強調します。

形容詞と同じように変化する定代名詞がいくつかあります。その中で、самыйкаждый はよく使われるので、優先的に学習するとよいでしょう。

また、「お互いに」を意味する друг друга についてもあわせて説明しました。

参考文献
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