ロシア語の形容詞・副詞の比較級【初級ロシア語】

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ロシア語の形容詞や副詞の比較級について説明します。

比較級は、-ее / -е(単一型)、более + 原級(合成型)、-ший(特殊型)の3つに大きく分けることができます。

話しことばでは、-ее / -е(単一型)の形の比較級がよく使われます。しかし、この形は修飾的用法ではふつう使われません。このため、修飾的用法には более + 原級(合成型)が使われます。一部の形容詞では、-ший(特殊型)も使われます。

書きことばでは、более + 原級(合成型)がひろく使われます。

「~より」のように比較の対象を表すには、接続詞 чем を使います。単一型の比較級の場合は、うしろに名詞の生格形を続けることで、比較の対象を表すこともできます。

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比較級の概要

形容詞は、人や物、事の性質や特徴、関係性を表す単語で、名詞を修飾したり、述語として使われたりします。

ロシア語の形容詞は、その表す意味に着目すると、性質形容詞、関係形容詞、所有形容詞に分類することができます。

形容詞の分類
  • 性質形容詞:人や物、事の性質や特徴を表す
  • 関係形容詞:人や物、事とのさまざまな関係性を表す
  • 所有形容詞:人や物、事の所属や所有関係を表す

このうち、性質形容詞には、他の物、事の性質と比べて「~より~な」という意味を表す比較級(ひかくきゅう)と、「最も~な」という意味を表す最上級(さいじょうきゅう)とがあります。これに対して、比較の意味を持たない形を原級(げんきゅう)といいます。

また、性質形容詞から作られる副詞にも、比較級や最上級の形があります。

比較級の作り方を、その形と用法、語尾などとともにまとめると次のようになります。

形容詞や副詞の比較級
用法 語尾 文体
修飾的述語的副詞的
-ее / -е(単一型)
無変化 中立
более +原級(合成型)
長語尾形 長語尾 書きことば
短語尾形 短語尾
副詞 無変化
-ший(特殊型)
長語尾 中立

ここでは、-ее / -е(単一型)、более + 原級(合成型)、-ший(特殊型)の3つに整理して、順に説明します。

この後の説明で、単語の中の赤字の母音字は、その母音にアクセントがおかれることを表しています。

比較級の形

-ее / -е(単一型)

形容詞の比較級で、ひろく使われるのは、形容詞の語幹に -ее または を付けた形です。単一型や単純型と呼ぶことがあります。

-ее型は、多くの形容詞や副詞から規則的に作られます。一方、 型は、一部の形容詞や副詞から、語幹末の子音を変化させて作られるため、不規則に変化するように見えます。

また、-ее型、型のどちらの形容詞も、おもに述語的用法で使われるため、短語尾形と呼ばれることがあります。しかし、原級の短語尾形のように、名詞の性・数によって形を変えることはないので注意してください。

副詞から作られた比較級も、もちろん形を変えることはありません。結果として単一型では、形容詞の比較級と副詞の比較級は同じ形になります。

また、-ее型や 型の比較級は、話しことばでも書きことばでも使われます。

-ее / -е(単一型)の特徴
  • -ее は多くの形容詞や副詞から規則的に作られる
  • は一部の形容詞や副詞から子音交替して作られる
  • おもに述語的用法で使われる
  • 語尾は変化しない(無変化)
  • 話しことばでも書きことばでも使われる(中立的)
  • 形容詞と副詞が同じ形になる

-ее

-ее型は、多くの形容詞や副詞から規則的に作られます。もととなる形容詞の語幹(男性単数形主格の -ый-ой を取り除いた形)に、-ее を付けるだけです。

アクセントは、原級の短語尾女性形のアクセントと同じ場所にあります。このため、-ее のはじめの е にアクセントがおかれることがあります。

いくつかの例を挙げます。

原級比較級意味
интересныйинтереснееおもしろい
красивыйкрасивее美しい
новыйновее新しい

новый の短語尾女性形は нова です。このため比較級のアクセントは短語尾女性形と同じように новее となります。

話しことばでは、-ее の代わりに -ей が使われることがあります。

一部の形容詞や副詞は、語幹に -ее ではなく を付けて比較級を作ります。一部とはいっても70単語ほどあるようですが、よく使われる単語が多いので、確実に覚える必要があります。

このタイプでは、語幹に を付けると、語幹末の子音が交替します。アクセントは、語幹の最後の音節にある単語がほとんどです。

子音の交替には、次のようなタイプがあります。

子音交替の例
交替前 /k/
к
/t/
т
/ɡ/
г
/d/
д
/z/
з
/x/
х
/s/
с
/st/
ст
/sk/
ск
交替後 /tɕ/
ч
/ʒ/
ж
/ʃ/
ш
/ɕː/
щ

このため、比較級の語末が -че, -же, -ше, -ще となる単語が多くあります。

補足

そのほかにも、 が付くときに語幹末の кок が取り除かれる単語や、х, сш の子音交替とは別に、語幹に直接 -ше の付く単語もあって、かなり不規則な変化をします。

よく使われる 型の比較級を次に挙げます。

原級比較級意味備考
лёгкийлегче軽い、易しい/k//tɕ/
кч
мягкиймягчеやわらかい
богатыйбогаче豊かな/t//tɕ/
тч
короткийкороче短い
дорогойдороже高価な、大切な/ɡ//ʒ/
гж
молодоймоложе若い/d//ʒ/
дж
редкийреже稀な、たまの
близкийближе近い/z//ʒ/
зж
низкийниже低い
узкийуже狭い
сухойсуше乾いた/x//ʃ/
хш
тихийтише静かな
высокийвыше高い/s//ʃ/
сш
густойгуще濃い/st//ɕː/
стщ
чистыйчище清潔な
частыйчаще度々の、しばしばの
плоскийплоще平らな/sk//ɕː/
скщ
широкийшире広い/r//rʲ/
дешёвыйдешевле安い/v//vlʲ/
молодоймладше年下の-ше付加
старыйстарше年上の
тонкийтоньше細い、薄い
долгийдольше時間が長い
раннийраньше早い
далёкийдальше遠い
глубокийглубже深い不規則
позднийпозже遅い
большойбольше大きい
маленький
малый
меньше小さい
мелкиймельче細かい、浅い
хорошийлучше良い
плохойхуже悪い

более + 原級(合成型)

形容詞の比較級には、「副詞 более + 形容詞や副詞の原級」の形で表現する方法があります。この比較級を合成型や複合型と呼ぶことがあります。

более + 原級(合成型)の特徴
  • 多くの形容詞(長語尾形、短語尾形)や副詞から作られる
  • 長語尾形は、修飾的用法でも述語的用法でも使われる
  • 短語尾形は、述語的用法で使われる
  • 副詞は副詞的用法で使われる
  • 語尾は長語尾形、短語尾形の変化をする(副詞は無変化)
  • おもに書きことばで使われる

「形容詞の原級」の多くには、長語尾形と短語尾形の2つの形があります。合成型の比較級では、形容詞の原級として、長語尾形と短語尾形のどちらの形も使うことができます。

形容詞の長語尾形と短語尾形については、次の記事で説明していますので参考にしてください。

более は副詞ですから形を変えることはありません。あとに続く形容詞の原級が、長語尾形ならば長語尾形の性・数・格変化をします。短語尾形ならば短語尾形の性・数変化をします。

また、「более + 原級(長語尾形)」は、修飾的用法と述語的用法のどちらでも使います。「более + 原級(短語尾形)」は、述語的用法としてだけ使います。

  • 修飾的用法
    • 1) Это более интересная книга. これはよりおもしろい本だ。(合成型・長語尾形)
  • 述語的用法
    • 2) Эта книга более интересная. この本はよりおもしろい。(合成型・長語尾形)
    • 3) Эта книга более интересна. この本はよりおもしろい。(合成型・短語尾形)
    • 4) Эта книга интереснее. この本はもっとおもしろい。(単一型)

合成型の「более + 原級」による比較級は、書きことば的な表現だということに注意しなければなりません。

単一型の比較級は、話しことばでも書きことばでもひろく使われる表現です。

ですから、述語的用法では、会話では 4) の単一型による表現が多く使われます。2) と 3) のような合成型による表現は書きことば的なので、話しことばではあまり使われません。

合成型を使った 1) の表現も書きことば的なのですが、単一型の比較級には修飾的用法がないため、その代わりとして、話しことばでも使われます。

補足

上で説明したように、修飾的用法では、話しことばでも合成型の比較級を使います。しかし、単一型の比較級を修飾的用法として使うこともあります。

その場合、修飾する名詞の後ろに形容詞を置きます。単一型ですから、その形容詞は -ее のまま変化しません。

  • У него есть книга интереснее, чем у меня.
    彼は私が持っているのよりおもしろい本を持っている。

副詞の場合は、「более + 副詞の原級」のかたちで、более も、もとの副詞も形を変えることはありません。

  • Она танцует более красиво. 彼女はもっと美しく踊る。

合成型の比較級で、более の反対語である менее を使うと、程度が低いという意味を表すことができます。日本語に直訳すると「~より少なく~な」となりますが、「~ほど~ではない」などと訳すことができるでしょう。

  • Это менее важная задача. これはそれほど重要ではない課題だ。

-ший(特殊型)

形容詞の中には、語末が -ший で終わる、もともと比較の意味を持ったものがあります。

数は少ないのですが、重要な単語が多いので覚える必要があります。

-ший(特殊型)の特徴
  • ごく一部の形容詞から作られる
  • 長語尾形の変化をして、修飾的用法で使われる
  • 話しことばでも書きことばでも使われる
原級比較級意味
большойбольший大きい
маленькийменьший小さい
старыйстарший年上の
молодоймлалший年下の
хорошийлучшийより良い、最良の
плохойхудшийより悪い、最悪の

これらの形容詞は、修飾的用法としてだけ使われます。修飾する名詞にあわせて、長語尾形の形容詞と同じ性・数・格の変化をします。

もととなる原級の形容詞とは別の形容詞と考えて覚えるのがよいでしょう。

なお、лучшийхудший は、「より良い」、「より悪い」という比較級の意味のほかに、「最良の」、「最悪の」という最上級の意味でも使われます。

特殊型の形容詞には、「~より」という比較の意味が含まれています。ですから、さらに болееменее を付けて複合型の比較級にすることはできません。

比較の表現

比較の対象

比較級を使った文で、「~より大きい」の「~より」のように比較する対象を表すには、次の2つの方法があります。

比較の対象を表す方法
  • чем による方法
  • 生格による方法

чем による方法

比較級の表現のあとに接続詞 чем を使って、「~より」の意味を表すことができます。

単一型、合成型、特殊型のどの比較級を使った表現でも使えます。

чем のあとには、名詞や代名詞の主格や対格、前置詞句、副詞、文など、いろいろな比較対象を置くことができます。また、чем の前には必ずコンマ「 , 」(ロシア語では запятая といいます)を書きます。

  • Он её любит больше, чем я. 私より彼のほうが彼女を愛している。
  • Он её любит больше, чем меня. 彼は私より彼女のほうを愛している。
  • У него есть более интересная книга, чем у меня.
    彼は私が持っているのよりおもしろい本を持っている。
  • Он говорит по-русски лучше, чем по-японски. 彼はロシア語より日本語のほうがよく話せる。
  • Это более трудный вопрос, чем я думал. これは、私が考えていたより難しい課題だ。

上の例文では、形容詞だけではなく副詞の比較級の例も挙げています。

補足

書きことばでは чем の代わりに нежели を使うことがあります。

生格による方法

比較の対象が名詞や代名詞で、主語どうしや直接目的語どうしを比べるときには、比較級のあとに比較の対象を生格にして置くことで、「~より」の意味を表すことができます。

ただし、この表現は単一型(-ее / -е)の比較級にしか使えません。

  • Он старше меня. 彼は私より年上だ。
  • Он любит математику больше физика. 彼は物理学より数学が好きだ。

2つめの文の数学と物理学を人物に置き換えて、次のようにすると意味が曖昧になってしまいます。

  • Он её любит больше мена. 彼は私より彼女を愛している。

мена は人称代名詞 я「わたし」の生格形ですが、主語の он と「わたし」を比較しているのか、直接目的語の её と「わたし」を比較しているのか、よくわかりません。

このようなときは чем を使って、чем ячем меня として比較の対象を表します。

比較の差

比較する対象どうしを比べて、その差がどれくらいあるかという比較の差は、「前置詞 на + 対格」で表します。

  • Он старше меня на два года. 彼は私より2歳年上だ。

「数詞 + 名詞」の組み合わせの対格形は、数詞が 2, 3, 4 のとき名詞は単数生格形、数詞が 5 以上の基数詞のとき名詞は複数生格形となります。

「~歳」の意味の год の単数生格形は года、複数生格形は лет です。

また、造格形で比較の差を表すこともできます。

  • Он старше меня двумя годами. 彼は私より2歳年上だ。

比較の差を「~倍」のかたちで表すには、「前置詞 в + 数詞 + раз」という表現を使います。

  • Он в два раза старше меня. 彼は私より2倍も年上だ。

この用法の前置詞 в のあとは対格形となりますが、「数詞 + 名詞」の組み合わせの対格形は、数詞が 2, 3, 4 のとき名詞は単数生格形、数詞が 5 以上の基数詞のとき名詞は複数生格形となります。

раз の単数生格形は раза、複数生格形は раз です。

比較の強め

比較級を強めるために、副詞 очень「とても」を使うことはできません。

よく使われる副詞は гораздо「ずっと、はるかに」です。намного も同じ意味で使われます。

書きことばでは значительно「はるかに、著しく」、話しことばでは куда「ずっと、はるかに」, ещё「さらに、ますます」が使われることがあります。

  • Эта книга гораздо интереснее. この本のほうがずっとおもしろい。

比較の弱め

比較級を弱めるためには、副詞 немного「少し」がよく使われます。несколько「いくらか、少し」が使われることもあります。

話しことばでは чуть「少しだけ、わずかに」が使われることがあります。

  • Она немного моложе меня. 彼女は私より少し若い。

また、単一型の比較級(-ее / -е)に、接頭辞 по- を付けると、比較の意味をやわらげて「少しだけ~な」の意味の形容詞や副詞が作られます。

  • Говорите погромче. 少し大きな声で話してください。

この例では、形容詞 громкий「声の大きい」から作られた副詞 громко「大きな声で」の比較級 громче に、接頭辞 по- が付いて、погромче「少し大きな声で」となっています。

まとめ

ロシア語の形容詞や副詞の比較級について説明しました。

比較級は、-ее / -е(単一型)、более + 原級(合成型)、-ший(特殊型)の3つに大きく分けることができます。

形容詞や副詞の比較級
用法 語尾 文体
修飾的述語的副詞的
-ее / -е(単一型)
無変化 中立
более +原級(合成型)
長語尾形 長語尾 書きことば
短語尾形 短語尾
副詞 無変化
-ший(特殊型)
長語尾 中立

話しことばでは、-ее / -е(単一型)の形の比較級がよく使われます。しかし、この形は修飾的用法ではふつう使われません。このため、修飾的用法には более + 原級(合成型)が使われます。一部の形容詞では、-ший(特殊型)も使われます。

書きことばでは、более + 原級(合成型)がひろく使われます。

「~より」のように比較の対象を表すには、接続詞 чем を使います。単一型の比較級の場合は、うしろに名詞の生格形を続けることで、比較の対象を表すこともできます。

参考文献
佐藤 純一(著)
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匹田 剛(著)
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