TBS系の「日曜劇場」枠で放送されたテレビドラマ『VIVANT』では、モンゴル語のセリフが数多く使われています。
ここでは、第9話のセリフの中から3つを厳選して、モンゴル語を解説します。紹介するセリフは次の3つです。
ここで解説したモンゴル語に間違いがあれば、ぜひコメントで教えてください。

VIVANTとは
『VIVANT』(ヴィヴァン)は、2023年7月からTBS系の「日曜劇場」枠で放送されたテレビドラマです。
堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、松坂桃李、役所広司といった俳優陣が共演しています。
モンゴルの北西にある架空の国家「バルカ共和国」を舞台にしているため、ドラマ内では、多くのモンゴル語のセリフが飛び交っています。
ここでは、第9話のセリフの中から3つを厳選して紹介して、モンゴル語を解説します。単なる挨拶ではなく、簡単な文章ですから、日常で使えるかもしれません。
なお、カタカナの発音表記を付けていますが、モンゴル語の発音を正確に表すことはできませんので、ご了承ください。
第8話と第10話のセリフは、次の記事で紹介しています。
第9話からセリフ3選
「赤い米料理をお持ちしました」

テロ組織「テント」の幹部たちの食事の場に、テントのメンバーであるマタ(内村遥)が、乃木(堺雅人)の作った赤飯を持ってきたときのセリフです。
Улаан будаа хоолыг авч ирлээ.
オラーン ボダー ホーリーグ アウチ イルレー
улаан は「赤い」という形容詞です。улаан будаа で「赤い米」となります。なお、「白米」は цагаан будаа「白い米」と言います。
хоол は「食事、食べ物」という単語です。これに「~を」を表す対格の接尾辞 -ыг が付いて「食事を」となります。
авч ирлээ は、「持ってきました」という意味で使われています。авах は「取る、買う」という動詞で、ирэх「来る」と組み合わせて、「手にとってやって来る」となっています。
「持ってくる」は、авчрах という1つの動詞でも表すことができます。その場合、「持ってきた」は авчирлаа となります。
接尾辞 -лээ は、その前にくる単語の母音によって、-лаа, -лээ, -лоо, -лөө と形が変わります。
全体では、「赤い米の食事を持ってきました」となります。
「人身売買の子は戸籍がないからわからないよ」

若い頃のノゴーン・ベキ(林遣都)が、さらわれた息子を探して役所を訪れたときに言われたセリフです。
Хүний наймаанд өртсөн хүүхдүүд өрхийн бүртгэл байдаггүй болохоор би тэрийг сайн мэдэхгүй.
フニー ナエマーンドゥ ウルトゥスン フーフドゥードゥ ウルヒーン ブルトゥゲル バエダッグイ ボルホール ビー テリーグ サエン メデフグイ
長い文ですが、少しずつ見ていきましょう。「~なので~」という複文になっています。
хүний наймаа は、「人の取引」つまり「人身売買」という意味です。
өртөх は「受ける」という動詞ですが、「悪い目に遭う」という意味でも使われます。ここでは、「人身売買で取り引きされる」といった意味合いです。完了の接尾辞 -сөн が付いて「取り引きされた」となります。
接尾辞 -сөн は、その前にくる単語の母音によって、-сан, -сэн, -сон, -сөн と形が変わります。
хүүхдүүд は хүүхэд「子ども」の複数形で「子どもたち」です。ここまでが、複文の前半部分の主語「人身売買された子どもたちは」です。
өрхийн бүртгэл は「家庭・家の登録」で、「戸籍」という意味です。
байдаггүй の -даг は動詞の表す動作や状態が習慣的であることを表す接尾辞です。байх「ある」に -даг が付いて、さらに否定の -гүй が付いているので、「(習慣的に)ない」となります。
つまり、「習慣的に戸籍がない」、「戸籍がないのがふつうだ」といった意味合いになります。
болохоор は「なる」という動詞 болох がもとになっていますが、全体で「~なので」という原因や理由を表す単語と考えるとよいです。
複文の後半部分の主語は би「私は」です。
тэрийг は、3人称単数の代名詞 тэр の属格で、「彼を、彼女を、その人を」です。түүнийг とも言います。
сайн は「よい」という形容詞ですが、ここでは副詞的に「よく」として使っています。
мэдэхгүй は мэдэх「知る、理解する」の否定で、「知らない、わからない」という意味です。
全体を直訳すると「人身売買された子どもたちは戸籍がないので、私は彼をよく知らない」となります。
「国は御社に採掘権を与えるつもりはありません」

テロ組織「テント」幹部のノコル(二宮和也)たちが、国土交通大臣(Batmend Baast)に呼び出されて言われたセリフです。
Манай засгийн газраас танай компанид олборлолтын зөвшөөрөл өгөхгүй байхаар шийдсэн.
マナエ ザスギーン ガズラース タナエ コンパーンドゥ オルボルロルティーン ズウシュールル ウグフグイ バエハール シードゥセン
засгийн газар は「政府」という単語なので、その前に манай が付いて「私たちの政府」の意味です。
「政府」に、奪格の接尾辞 -аас が付いていますが、ここでは「~から」の意味はありません。後に出て来る動詞 өгөх「与える」の動作主であることを表しています。
このように、団体や組織が動作主であることを表すときに、奪格の接尾辞を使うことがあります。
танай は「あなたたちの」、компани はロシア語由来の単語で「会社」です。これに「~に、~で」を表す与位格の接尾辞 -д が付いて、「あなたたちの会社に」となります。
その後は、難しい単語が続きますが、олборлолт「採掘」、зөвшөөрөл「許可」です。これらを属格の接尾辞 -ын でつなげて、「採掘の許可」となります。
өгөхгүй は動詞 өгөх「与える」の否定で「与えない」です。
шийдэх は「決める」という動詞で、「~することに決める」というときには、前にくる動詞には造格の語尾が付きます。ここでは байх が байхаар となっています。
全体で、「私たちの政府はあなたたちの会社に採掘の許可を与えないことに決めた」となります。
劇中では、ノコルたちを呼び出したのは国土交通大臣とされていましたが、合意文書には
「Уул уурхайн яам(鉱業省)」とありましたから、鉱業大臣なのでしょう。
実際のモンゴル国には、Уул уурхай, хүнд үйлдвэрийн яам(鉱業・重工業省)という省が存在します。

まとめ
TBS系の「日曜劇場」枠で放送されたテレビドラマ『VIVANT』では、数多くのモンゴル語のセリフが使われています。第9話のセリフの中から、次の3つを厳選してモンゴル語を解説しました。
モンゴル語がどのようなことばなのかを知るには、『モンゴル語のしくみ』を読むとよいでしょう。
入門~初級レベルのモンゴル語を学習するには、『ニューエクスプレスプラス モンゴル語』が最適です。
さらに中級レベルのモンゴル語まで学習したい方には、『詳しくわかるモンゴル語文法』をおすすめします。
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